2025.12.29

特定技能の健康診断ガイド|申請不備を防ぐ手順・費用・必要書類を解説

特定技能の健康診断ガイド|申請不備を防ぐ手順・費用・必要書類を解説

特定技能の受け入れ準備では、健康診断だけでなく、制度全体のルール(在留資格要件・支援義務・手続きの流れ)を把握しておくことで、申請不備や手戻りを大きく減らせます。まずは特定技能制度の全体像をわかりやすく整理した解説も併せて確認してから、本記事の健康診断手続きに進むのがおすすめです。

「特定技能外国人の受け入れ準備を進めているが、健康診断の手続きが複雑でよくわからない…」
「申請書類に不備があって、受け入れが遅れたらどうしよう…」

初めて特定技能人材を受け入れる企業の人事・総務担当者の皆様は、このような不安をお持ちではないでしょうか。特定技能の健康診断は、単に病院で検査を受ければよいという単純なものではなく、法的な要件や提出書類の様式、受診のタイミングが厳密に定められています。

この記事では、特定技能外国人の健康診断について、企業の担当者が知っておくべき全てを網羅した「完全ガイド」として、手順を一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を読めば、必要な手続きと書類が明確になり、申請不備のリスクをなくし、スムーズな受け入れを実現できます。

なぜ必要?特定技能で健康診断が義務付けられる2つの法的根拠

特定技能外国人の健康診断は、なぜこれほど厳密に求められるのでしょうか。その背景には、「出入国管理法」と「労働安全衛生法」という、2つの異なる法律に基づく義務が存在します。この2つの側面を理解することが、手続きを正しく進めるための第一歩です。

①在留資格申請の要件(出入国管理法)

まず、特定技能の在留資格を得るための大前提として、「日本で安定的・継続的に就労できる健康状態であること」を出入国在留管理庁(以下、入管庁)に証明する必要があります。

これは、外国人材本人が健康上の問題なく業務を遂行できるかどうか、また、日本の公衆衛生上のリスクがないかどうかを確認するためのものです。つまり、健康診断結果は、在留資格の許可を得るための必須書類の一つと位置づけられています。この要件を満たさない場合、在留資格申請が不許可となる可能性があります。

②企業の安全配慮義務(労働安全衛生法)

次に、企業側の義務としての側面です。特定技能外国人は、雇用契約を結ぶ「労働者」です。そのため、日本人従業員と同様に「労働安全衛生法」が適用されます。

この法律では、事業者は労働者の安全と健康を確保する「安全配慮義務」を負っており、その一環として、雇入れ時および年1回の定期的な健康診断の実施が義務付けられています。これを怠ると、労働基準監督署からの指導や罰則の対象となる可能性があるため、企業として必ず遵守しなければならないルールとなっています。

【タイミングが重要】いつ受ける?3つのフェーズと有効期限

特定技能の健康診断で最も注意すべき点が「タイミング」です。手続きのフェーズごとに、受診すべきタイミングと診断書の有効期限が異なります。スケジュール管理を誤ると、せっかく受けた健康診断が無効になってしまうおそれがあるため、以下の3つのフェーズを正確に把握しましょう。

フェーズ 対象者 目的 有効期限 根拠法
1. 在留資格申請前 全員 在留資格の取得 ・海外在住者:診断日から3ヶ月以内
・国内在留者:申請日から1年以内
出入国管理法
2. 雇入れ時 全員 安全配慮義務(適正配置など) 雇入れ直前・直後 労働安全衛生法
3. 定期健診 全員 安全配慮義務(健康状態の把握) 1年以内ごとに1回 労働安全衛生法

フェーズ1:在留資格申請前

入管庁へ在留資格の申請を行う際に提出する健康診断です。有効期限は、外国人が居住している場所によって異なるため、特に注意が必要です。

  • 海外に住んでいる外国人を呼び寄せる場合(在留資格認定証明書交付申請)
    提出する健康診断書は、診断日から3ヶ月以内のものである必要があります。在留資格認定証明書(COE)が発行されてから実際に入国するまでの期間も考慮し、計画的に受診を手配しましょう。
  • 日本に住んでいる外国人を雇用する場合(在留資格変更許可申請)
    技能実習生や留学生など、すでに日本に在留している人材を雇用する場合は、申請日から1年以内に受診した健康診断書を提出できます。ただし、後述する「雇入れ時健康診断」を兼ねる場合は、診断日から3ヶ月以内のものである必要があります。

フェーズ2:雇入れ時と入社後の定期健診

労働安全衛生法に基づき、企業が実施する健康診断です。

  • 雇入れ時健康診断
    外国人材を雇い入れた際に実施が義務付けられています。
    ただし、在留資格申請前に受けた健康診断が、法定の検査項目をすべて満たしており、かつ、診断日から3ヶ月以内のものである場合は、その結果をもって「雇入れ時健康診断」に代えることができます。実務上はこの方法が最も効率的です。
  • 定期健康診断
    入社後は、日本人従業員と同様に1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を実施する義務があります。受診漏れがないよう、企業側でしっかりとスケジュール管理を行いましょう。

必須項目と必要書類|公式様式もダウンロード可能

次に、具体的に「何を検査し、どの書類を準備すればよいのか」を見ていきましょう。検査項目が不足していたり、様式が異なっていたりすると、申請が受理されない可能性があるため、正確な確認が不可欠です。

【一覧】特定技能で必須の検査項目

特定技能の申請および、労働安全衛生法で求められる健康診断の必須項目は、以下の通りです。医療機関に健康診断を依頼する際は、これらの項目がすべて含まれているか必ず確認してください。

No. 検査項目 検査内容の概要
1 既往歴及び業務歴の調査 過去の病気や手術歴、仕事内容の問診
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 医師による問診、視診、聴診など
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 身体の基本的な計測
4 胸部エックス線検査 結核や肺炎などの呼吸器疾患の確認
5 血圧の測定 高血圧などの循環器系リスクの確認
6 貧血検査(赤血球数、血色素量) 貧血の有無の確認
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP) 肝臓の異常の有無の確認
8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪) 脂質異常症(高脂血症)のリスク確認
9 血糖検査 糖尿病のリスク確認
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) 糖尿病や腎臓疾患のリスク確認
11 心電図検査 不整脈や心疾患のリスク確認

※医師の判断により一部項目を省略できる場合がありますが、入管庁への申請では原則として全項目の実施が推奨されます。

【要注意】業種によって求められる追加検査(介護・食品など)

上記の必須項目に加え、従事する業務分野によっては、感染症対策などの観点から、追加の検査が推奨・要求される場合があります。

  • 介護分野:利用者への感染リスクを防ぐため、結核の有無をより詳細に確認する検査(IGRA検査など)や、B型・C型肝炎の検査が求められることがあります。
  • 飲食料品製造・外食分野:食中毒を防止するため、検便(サルモネラ、赤痢、O-157など)が必須となるのが一般的です。

これらの追加検査は、企業の自主的な安全管理として、また保健所の指導などに基づき行われます。自社が属する分野で求められる要件を事前に確認しておきましょう。

提出書類「健康診断個人票」「受診者の申告書」の注意点

入管庁へ提出する書類は、主に以下の2点です。公式の参考様式が用意されているため、これを活用するのが最も確実です。

  1. 健康診断個人票(参考様式第1号の5)
    検査結果を医師に記入してもらうための書類です。

    • ポイント:必ず医師の署名をもらってください。署名がないものは無効です。
    • ダウンロード出入国在留管理庁ウェブサイトから最新の様式を入手できます。
  2. 受診者の申告書(参考様式第1号の5の2)
    外国人材本人が、健康状態について偽りなく申告したことを誓約する書類です。

    • ポイント:この申告書は、本人が理解できる言語(母国語など)で内容を説明し、本人が署名する必要があります。日本語を十分に理解できない場合は、必ず翻訳を添付してください。

費用負担から病院探しまで|担当者の実務Q&A

ここでは、担当者の皆様が実務で直面するであろう、より具体的な疑問についてQ&A形式でお答えします。

健康診断の費用は「企業負担」が原則

Q. 健康診断の費用は、会社と本人、どちらが負担すべきですか?

A. 法律の根拠に基づき、「企業が負担する」のが原則です。

費用負担については、健康診断の根拠法によって考え方が異なります。

  • 労働安全衛生法に基づく健康診断(雇入れ時・定期)
    これは法律で企業に実施が義務付けられているため、費用は当然に企業が全額負担しなければなりません。これに違反した場合、法的な問題に発展する可能性があります。
  • 在留資格申請前の健康診断
    こちらは直接的な労働安全衛生法の義務ではありませんが、特定技能外国人を受け入れるための必須手続きの一部です。そのため、円滑な受け入れと外国人材との良好な関係構築の観点から、受け入れ企業が負担することが強く推奨されています。送り出し機関との契約で、企業負担が定められているケースも多いです。

費用相場は1万円〜1万5千円程度ですが、実際の金額は医療機関によって異なります。

病院の探し方と本人への伝え方のポイント

Q. どこの病院で受けさせればよいですか?また、本人にどう伝えればよいですか?

A. 指定病院はありません。ただし、外国人本人への配慮が必要です。

  • 病院の探し方
    特定技能の健康診断については、国が指定する特定の病院はありません。前述の必須検査項目をすべて実施できる医療機関(病院やクリニック)であれば、どこで受診しても問題ありません。
    外国人材の受け入れに慣れている医療機関や、多言語対応が可能な病院をインターネットで検索してみるのも良いでしょう。地域の国際交流協会などに相談するのも一つの方法です。
  • 本人への伝え方のポイント
    外国人本人に安心して受診してもらうためには、文化や宗教への配慮が不可欠です。

    • プライバシーへの配慮:特にイスラム教徒の女性は、人前で肌を見せることに抵抗がある場合があります。可能であれば女性医師・スタッフが対応してくれる医療機関を探したり、個室での対応を依頼したりする配慮が望まれます。
    • 食事制限の説明:血糖値や中性脂肪の検査では、事前の食事制限(絶食)が必要です。なぜ食事を抜く必要があるのか、その理由を本人が理解できる言葉で丁寧に説明しましょう。
    • 問診票のサポート:日本語の問診票を記入するのが難しい場合は、事前に翻訳を用意したり、当日に通訳者が付き添ったりするなどのサポートを行いましょう。

健康診断後の対応|結果の管理と「異常あり」の場合の対処法

健康診断は、受診して結果を提出すれば終わりではありません。結果に基づいた適切な事後対応も、企業の重要な責務です。

結果の通知・保管・報告の3つの義務

企業には、健康診断の結果に関して以下の3つの義務があります。

  1. 結果の通知:診断結果は、遅滞なく本人に通知しなければなりません。異常所見があった項目については、その意味を丁寧に説明する配慮が求められます。
  2. 結果の保管:健康診断個人票は、作成日から5年間の保管義務があります。これは個人情報の中でも特に慎重な取り扱いが求められる「要配慮個人情報」にあたるため、施錠できるキャビネットで保管するなど、厳重な管理が必要です。
  3. 労働基準監督署への報告:常時50人以上の労働者を使用する事業場では、定期健康診断の結果を所轄の労働基準監督署に報告する義務があります。

「要再検査」になった場合の対応フローと就業上の措置

もし診断結果に「異常の所見あり」や「要再検査」といった項目があった場合、企業は適切に対応しなければなりません。

  1. 再検査・精密検査の勧奨
    まずは本人に結果を伝え、医師の指示に従い、速やかに再検査や精密検査を受けるよう促します。なお、再検査の費用については法的な負担義務はなく、労使間の取り決めによりますが、企業の安全配慮の観点から、企業が負担することが望ましいでしょう。
  2. 医師からの意見聴取
    診断結果に基づき、本人の就業が可能かどうか、また、業務内容について配慮すべき点はないかについて、企業は医師の意見を聴かなければなりません(努力義務ではありません)。
  3. 就業上の措置
    医師の意見を勘案し、必要があると判断した場合は、「就業場所の変更」「作業の転換」「労働時間の短縮」といった、本人の健康状態に配慮した「就業上の措置」を講じる義務があります。これは、外国人材の健康を守り、安全に働き続けてもらうための企業の重要な責務です。

まとめ:確実な手続きで、スムーズな受け入れを

特定技能外国人の健康診断は、在留資格申請と企業の安全配慮義務という2つの側面から求められる重要な手続きです。

  • タイミング:「申請前」「雇入れ時」「定期」の3つのフェーズと有効期限を把握する
  • 項目と様式:法定の必須項目を網羅し、公式の様式を活用する
  • 費用:原則として企業が負担する
  • 事後対応:結果の管理と、異常があった場合の就業上の措置を適切に行う

これらのポイントを押さえることで、申請不備による手戻りを防ぎ、外国人材をスムーズに受け入れることができます。何より、適切な健康管理は、彼らが日本で安心して能力を発揮し、長く活躍してもらうための基盤となります。

もし、こうした一連の手続きに不安を感じたり、専門的なサポートが必要だと感じたりした場合は、特定技能の支援を専門とする「登録支援機関」に相談するのも有効な選択肢です。

私たち「海外人材コネクトナビ」では、貴社のニーズに合った優良な登録支援機関をご紹介しています。健康診断のサポートはもちろん、複雑な申請書類の作成から入社後の生活支援まで、専門家が貴社の特定技能人材受け入れを力強くバックアップします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

執筆者コネクトナビ編集部

外国人材採用に役立つ情報を随時発信しています。


監修青山 信明

2018年から一般社団法人外国人介護留学生支援機構にて、日本で介護職を目指す外国人留学生の生活支援および就職支援を担当。ベトナム・ネパール・インド国籍の学生支援に従事する。
特定技能制度施行後は、同機構が登録支援機関として認可を受ける過程にも関与し、現在は主にベトナム国籍人材を中心とした特定技能外国人の支援業務を行っている。

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