特定技能で訪問介護が解禁!必要要件と5つの遵守事項を徹底解説
介護業界における深刻な人手不足は、もはや一事業所の問題ではなく、日本社会全体が直面する喫緊の課題です。2026年度には約25万人、2040年度には約57万人の介護職員が不足すると厚生労働省が推計する中(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」令和6年7月)、特に訪問介護の分野では有効求人倍率が14倍を超えるという極めて厳しい状況が続いています。
こうした状況を打開すべく、2025年4月21日、政府は特定技能外国人による訪問介護への従事を正式に解禁しました。これまで施設サービスに限定されていた特定技能介護の活躍の場が、訪問系サービスへと大きく拡大したのです。大阪の訪問介護事業所においても、この制度変更は新たな人材確保の可能性として注目されています。
しかし、「訪問介護で外国人材を受け入れるには何が必要なのか」「施設サービスとは何が違うのか」「具体的にどのような準備をすればよいのか」といった疑問をお持ちの経営者様も多いのではないでしょうか。この記事では、2025年11月時点の最新情報を基に、特定技能外国人による訪問介護の全容を、事業所が満たすべき要件から受け入れのメリット・デメリットまで、実務的な視点で徹底解説します。
この記事のポイントは?
特定技能による訪問介護解禁の背景と経緯
なぜ今、訪問介護の解禁なのか
特定技能制度は2019年4月に創設されましたが、当初から訪問介護への従事は認められていませんでした。その理由は、訪問介護が施設サービスと異なり、利用者宅という密室空間での一対一のサービス提供となるため、コミュニケーション能力や緊急時対応力がより高度に求められると考えられていたためです。
しかし、訪問介護員の人手不足は年々深刻化の一途をたどっています。厚生労働省の「職業安定業務統計」によれば、訪問介護員の有効求人倍率は令和5年度で14.14倍に達し、介護職員全体の3.24倍をはるかに上回る状況です。公益財団法人介護労働安定センターの調査では、約8割の訪問介護事業所が人材不足を感じており、「各職員の時間あたりの業務負担の重さ・余裕のなさ」が最大の課題として挙げられています。
こうした状況を受け、厚生労働省は2024年6月、「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」において中間まとめを発表し、一定の条件の下で特定技能外国人による訪問介護への従事を認めるべきとの結論に至りました。その後、2025年2月17日の「特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」を経て、同年3月11日に閣議決定、2025年4月21日に正式施行されました(出典:厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」)。
解禁された訪問系サービスの範囲
今回の制度改正により、特定技能外国人が従事できるようになった訪問系サービスは以下の通りです。
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 夜間対応型訪問介護
- 介護予防訪問入浴介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 訪問型サービス(総合事業)
なお、EPA(経済連携協定)による介護福祉士や在留資格「介護」を持つ外国人は、従来から訪問介護への従事が可能でした。今回の制度改正は、特定技能と技能実習の在留資格を持つ外国人に対して初めて訪問介護への道を開いたという点で画期的なものです。
特定技能介護の現状:在留者数の推移
特定技能介護で就労する外国人の数は年々増加しています。出入国在留管理庁の公表データによれば、2024年12月末時点で特定技能介護の在留者数は約44,367人に達し、過去最高を更新しました。2019年の制度創設時からわずか5年余りで、介護現場における重要な戦力となっています。
国籍別では、インドネシア、ミャンマー、ベトナムの3カ国で全体の約6割を占めており、特にインドネシアは2024年に最多となりました。大阪府内でも、2024年6月時点で16,543人の特定技能外国人が受け入れられており(全国2位)、このうち一定数が介護分野に従事していると推察されます。
訪問介護に従事するための要件:外国人本人が満たすべき条件
特定技能外国人が訪問介護に従事するためには、通常の特定技能介護の要件に加えて、追加の要件を満たす必要があります。施設サービスと訪問サービスでは求められる技能レベルやコミュニケーション能力が異なるため、より厳格な基準が設けられています。
必須要件①:介護職員初任者研修課程の修了
訪問介護に従事するためには、介護職員初任者研修課程を修了していることが必須です。これは日本人ホームヘルパーと同等の条件であり、訪問介護の基本的な知識と技能を習得していることを証明するものです。
介護職員初任者研修は、講義と演習を合わせて130時間のカリキュラムで構成されており、介護の基本、コミュニケーション技術、生活支援技術、認知症の理解などを学びます。特定技能外国人の場合、研修は日本語で実施されるため、一定の日本語能力(特定技能介護では日本語能力試験N4以上または介護日本語評価試験の合格が要件)を持っていることが前提となります。
必須要件②:介護事業所等での実務経験1年以上
原則として、介護事業所等での実務経験が1年以上あることが求められます。これは、訪問介護という一対一のサービス提供形態において、ある程度の経験と自信を持って業務に臨めるようにするための配慮です。
ここでいう「介護事業所等」には、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホーム、デイサービスセンターなど、訪問系以外の介護施設・事業所が含まれます。つまり、施設サービスで1年以上の経験を積んだ後、訪問介護へと活躍の場を広げることができるという仕組みです。
ただし、厚生労働省の通知では、「原則」という表現が使われており、個別の事情に応じて柔軟な運用がなされる可能性もあります。詳細については、登録支援機関や特定技能協議会にご確認ください。
必須要件③:訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修の受講
訪問介護業務に従事する前に、受入事業所が実施する「訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修」を受講することが義務付けられています。この研修では、利用者の居宅においてサービスを提供する際の基本事項、生活支援技術、利用者等とのコミュニケーション、日本の生活様式などを学びます。
施設サービスとは異なり、訪問介護では利用者の生活環境そのものがサービス提供の場となります。そのため、プライバシーへの配慮、家族との関係構築、緊急時の対応など、施設では経験しない状況への対応力が求められます。この研修は、そうした訪問介護特有の知識とスキルを身につけるための重要なステップです。
その他の基本要件
上記の追加要件に加え、特定技能介護の基本要件も当然満たす必要があります。
- 介護技能評価試験の合格:介護業務に関する知識と技能を評価する試験。2025年1月末時点で累計120,220人が合格しています。
- 介護日本語評価試験の合格(または日本語能力試験N4以上):介護現場で必要な日本語コミュニケーション能力を評価する試験。累計113,572人が合格しています。
- 年齢18歳以上:成年に達していることが要件です。
なお、技能実習「介護職種」を良好に修了した外国人は、介護技能評価試験と介護日本語評価試験が免除されます。
事業所が満たすべき5つの遵守事項:訪問介護受け入れの具体的要件
特定技能外国人を訪問介護に従事させる場合、受入事業所は通常の特定技能受入要件に加えて、訪問系サービス特有の5つの遵守事項を守る必要があります。これらは厚生労働省の通知「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」(令和7年3月31日付)で詳細に定められています。
遵守事項①:訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修の実施
前述の通り、特定技能外国人に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うことが必須です。この研修は、訪問介護業務に従事する前に実施する必要があります。
研修内容には以下の項目が含まれるべきとされています。
- 利用者の居宅においてサービスを提供する介護等の業務の基本事項
- 生活支援技術(食事介助、排泄介助、入浴介助、移動介助など)
- 利用者等とのコミュニケーション技法
- 日本の生活様式や文化への理解
- 訪問介護における安全管理と感染症対策
- 緊急時の対応方法
研修は座学だけでなく、実技演習を含めることが推奨されています。また、外国人が理解しやすいよう、やさしい日本語での説明や、必要に応じて母国語資料の活用も有効です。
遵守事項②:一定期間の同行訪問によるOJTの実施
特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練(OJT:On-the-Job Training)を行うことが義務付けられています。
同行訪問の期間や頻度については、個々の外国人の習熟度に応じて柔軟に設定することが求められますが、一般的には以下のような段階的なアプローチが推奨されます。
- 初期段階(概ね1〜2週間):すべての訪問に同行し、利用者宅でのサービス提供の流れ、コミュニケーションの取り方、記録の方法などを実地で指導します。
- 中期段階(概ね2〜4週間):徐々に外国人にメイン業務を任せ、同行者は見守りとサポートに徹します。
- 最終確認段階(概ね1〜2週間):定期的な同行訪問で習熟度を確認し、一人での訪問が可能かを判断します。
厚生労働省が提供する「同行訪問チェックシート」を活用し、各段階での到達度を記録することで、組織的かつ客観的な評価が可能となります。同行訪問は単なる監督ではなく、外国人が自信を持って一人で訪問できるようになるまでの教育・育成プロセスであることを念頭に置く必要があります。
遵守事項③:キャリアアップ計画の作成
特定技能外国人に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成することが求められます。
キャリアアップ計画は、外国人本人と事業所が共同で作成するものであり、以下の事項を具体的に記載する必要があります。
- 従事する業務内容の詳細(訪問介護、訪問入浴介護など)
- 業務上の注意事項や禁止事項
- 短期目標(3ヶ月〜6ヶ月)と長期目標(1年〜3年)
- 技能向上のための研修計画(実務者研修、介護福祉士国家試験対策など)
- キャリアパスと処遇改善の見通し
- 外国人本人の意向や希望(在留資格「介護」への変更希望、帰国後のキャリアなど)
作成したキャリアアップ計画書は、特定技能協議会事務局(公益社団法人国際厚生事業団)に提出する必要があります。提出のタイミングは、訪問介護業務に従事させる前、または従事開始後速やかに、とされています。
キャリアアップ計画は、一度作成して終わりではなく、定期的(6ヶ月〜1年ごと)に外国人と面談を行い、進捗状況を確認し、必要に応じて見直すことが重要です。大阪の特養ホームでは、面談記録をキャリアアップ計画書に追記する形式を採用し、外国人のモチベーション維持に成功している事例もあります。
遵守事項④:ハラスメント防止のための対応マニュアル整備
特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する現場において、ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずることが義務付けられています。
訪問介護は利用者宅という密室で行われるため、利用者やその家族からのハラスメント(セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、人種差別的言動など)のリスクが施設サービスよりも高いと指摘されています。外国人であることを理由とした不当な扱いや、過度な要求を受ける可能性もあります。
事業所が講じるべき具体的な措置としては、以下のようなものがあります。
- ハラスメント対応マニュアルの作成と共有:どのような行為がハラスメントに該当するか、発生時の対応手順、相談窓口の連絡先などを明記したマニュアルを作成し、外国人を含む全職員に周知します。
- 相談窓口の明確化:ハラスメントを受けた際に相談できる窓口(責任者、人事担当者、外部相談機関など)を明示し、外国人が母国語で相談できる体制があればさらに望ましいです。
- 定期的な面談とヒアリング:月1回程度、責任者が外国人と面談し、困っていることや不安なことがないかを確認します。
- 利用者・家族への事前説明:外国人が訪問介護を担当することを利用者と家族に事前に説明し、理解と協力を求めます(後述の遵守事項⑤)。
万が一ハラスメントが発生した場合は、迅速に事実確認を行い、必要に応じて訪問先の変更やサービス提供の一時中断などの措置を講じることが重要です。外国人が安心して働ける環境を整備することは、定着率向上にも直結します。
遵守事項⑤:ICTの活用を含めた環境整備
特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する現場において、不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術(ICT)の活用を含めた必要な環境整備を行うことが求められます。
訪問介護は施設サービスと異なり、周囲に同僚や上司がいない状況でサービスを提供します。そのため、緊急時の連絡体制や、日常的な業務支援のためのICT活用が重要となります。具体的には、以下のような取り組みが有効です。
- スマートフォンやタブレットの支給:訪問先から事業所への報告・連絡・相談を迅速に行えるよう、業務用のスマートフォンやタブレットを支給します。
- ビデオ通話機能の活用:緊急時や判断に迷う場合、利用者の状況をビデオ通話で責任者に確認してもらい、指示を受けられる体制を整えます。
- 介護記録アプリの導入:スマートフォンやタブレットでサービス提供記録を入力できるアプリを導入することで、記録業務の負担を軽減し、リアルタイムでの情報共有が可能になります。
- 翻訳アプリの活用:利用者とのコミュニケーションで困った際に、翻訳アプリを補助的に使用することも一つの方法です(ただし、基本的には日本語でのコミュニケーションが前提です)。
- 位置情報共有システム:外国人の安全確保のため、訪問先への移動状況や現在地を事業所で把握できる位置情報共有システムを導入することも検討に値します。
厚生労働省は令和6年度の調査研究事業「外国人介護人材の受入れ・定着に向けた効果的なICT機器等のツールの利用に関する調査研究事業」において、訪問系サービスでのICT活用事例を紹介しています。参考にされることをお勧めします。
利用者・家族への事前説明の義務
上記5つの遵守事項に加えて、受入事業所において、特定技能外国人が利用者の居宅を訪問する場合があることなどについて、利用者やその家族に対して事前に丁寧な説明を行うことも義務付けられています。
説明は書面を交付して行い、利用者またはその家族に当該書面への署名を求めることとされています。厚生労働省が提供する様式(別添1「利用者・家族への説明様式(実務経験1年以上)」、別添2「利用者・家族への説明様式(実務経験1年未満)」)を活用できます。
説明書面には、以下の内容を記載します。
- 訪問する外国人介護人材の氏名、国籍、経験年数
- 保有している資格(介護職員初任者研修修了、特定技能など)
- 日本語能力のレベル
- これまでの研修・訓練の内容
- 緊急時の連絡体制
利用者や家族の中には、外国人による訪問介護に不安を感じる方もいるかもしれません。そうした不安を払拭するため、外国人本人の人柄や熱意、日本語能力、これまでの経験などを丁寧に伝えることが重要です。可能であれば、サービス開始前に外国人本人も同席して顔合わせを行うと、信頼関係の構築に効果的です。
特定技能協議会への適合確認申請:受入前に必須の手続き
特定技能外国人を訪問系サービスに従事させる場合、受入事業所はあらかじめ特定技能協議会から上記の遵守事項に適合していることを確認した上で、適合確認書の発行を受ける必要があります。
特定技能協議会とは
介護分野における特定技能協議会は、公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)が事務局を務めており、特定技能外国人の適正な受入れと保護を図るための組織です。受入事業所は、特定技能外国人を雇用する前に、この協議会の構成員になる必要があります。
適合確認の流れ
訪問系サービスへの従事に関する適合確認は、以下の流れで行われます。
- 訪問系サービスの要件に係る報告書の作成:事業所が5つの遵守事項を適切に履行できる体制・計画等を有することを示す報告書を作成します。
- 巡回訪問等実施機関(国際厚生事業団)への書類提出:作成した報告書を、国際厚生事業団の専用ページから提出します。在留資格ごとに申請ページが異なるため注意が必要です。
- 審査:提出された報告書を基に、国際厚生事業団が遵守事項の適合性を審査します。
- 適合確認書の発行:審査を通過すると、適合確認書が発行されます。この適合確認書は、当該特定技能外国人が訪問系サービスに従事する前に発行される必要があります。
適合確認書の発行後、初めて特定技能外国人を訪問系サービスに従事させることができます。適合確認を受けずに訪問系サービスに従事させた場合、出入国管理法違反となる可能性がありますので、必ず事前に手続きを完了させてください。
キャリアアップ計画の提出
適合確認とは別に、前述のキャリアアップ計画書も特定技能協議会事務局に提出する必要があります。提出のタイミングは以下の通りです。
- 訪問系サービスに従事させる前、または従事開始後速やかに
- キャリアアップ計画を変更した場合は、変更後速やかに
適合確認とキャリアアップ計画の提出は、いずれも受入事業所の責務です。登録支援機関に委託している場合でも、最終的な責任は受入事業所にあることを認識しておく必要があります。
訪問介護で特定技能外国人を受け入れるメリット
訪問介護における特定技能外国人の受入れは、単なる人手不足の穴埋めではなく、事業所の持続可能性や サービスの質向上につながる可能性を秘めています。
メリット①:深刻な人手不足の解消
最大のメリットは、やはり慢性的な訪問介護員不足を緩和できることです。有効求人倍率が14倍を超える訪問介護分野において、特定技能外国人という新たな人材プールの活用は、事業継続のための重要な選択肢となります。
大阪のある訪問介護事業所では、施設サービスで2年の経験を積んだベトナム人特定技能外国人を訪問介護に配置したところ、丁寧なサービス提供と利用者からの高い評価を得て、新規利用者の獲得にもつながったとのことです。外国人の受入れによって、これまで人手不足で断らざるを得なかった新規依頼に対応できるようになり、事業所の収益向上にも貢献しています。
メリット②:若く意欲的な人材の確保
特定技能外国人の多くは20代〜30代の若年層です。日本で働くために母国で介護の勉強をし、試験に合格してきた彼らは、高いモチベーションと学習意欲を持っています。
訪問介護は体力的にハードな面もありますが、若く体力のある外国人材は、複数件の訪問や移動にも対応できます。また、介護技術の習得にも積極的で、実務者研修や介護福祉士国家試験にチャレンジする意欲を持つ者も少なくありません。こうした向上心のある人材が職場にいることで、日本人職員にも良い刺激となり、組織全体の活性化につながります。
メリット③:在留資格「介護」への移行による長期雇用の可能性
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限ですが、介護福祉士国家試験に合格すれば在留資格「介護」に変更でき、在留期間の制限がなくなります。つまり、長期的に日本で働き続けることが可能になるのです。
訪問介護事業所にとって、長期的に安定して働いてくれる人材は貴重です。利用者との信頼関係の構築には時間がかかるため、頻繁に担当者が変わることは利用者にとっても事業所にとっても好ましくありません。外国人が在留資格「介護」を取得して長く働いてくれれば、利用者との深い信頼関係を築き、質の高いサービスを提供し続けることができます。
事業所としては、外国人の介護福祉士国家試験合格を支援するため、受験対策講座の受講費用補助や、勉強時間確保のためのシフト調整など、積極的なサポートを行うことが、長期的な人材確保につながります。
メリット④:多様性による組織力の向上
外国人材を受け入れることで、職場に多様性(ダイバーシティ)がもたらされ、組織力が向上します。異なる文化背景を持つ人材が加わることで、新たな視点やアイデアが生まれ、業務改善やサービスの質向上につながることもあります。
また、外国人を受け入れるための環境整備(マニュアルの見直し、研修体制の構築、ICT導入など)は、結果的に日本人職員にとっても働きやすい職場づくりにつながります。「外国人でも理解できるマニュアル」は、新人の日本人職員にとっても分かりやすいマニュアルであり、組織全体の業務標準化や品質向上に寄与します。
メリット⑤:利用者の生活の質(QOL)向上への貢献
外国人介護人材の多くは、母国の家族を支えるために日本で働いています。そうした背景から、利用者への感謝の気持ちや、丁寧にケアしようという姿勢が自然と生まれます。
利用者の中には、外国人との交流を楽しみにする方もいます。「今日はどんな話をしてくれるかな」「母国の料理について教えてもらおう」といったコミュニケーションが、利用者の生活に刺激と楽しみをもたらすこともあります。異文化交流は、利用者の認知機能維持や社会参加意欲の向上にも良い影響を与える可能性があります。
訪問介護で特定技能外国人を受け入れるデメリットと対策
メリットがある一方で、訪問介護における外国人受入れには、施設サービス以上に注意すべき点やリスクも存在します。デメリットを正しく理解し、適切な対策を講じることが、受入れ成功の鍵となります。
デメリット①:日本語コミュニケーション能力の課題
訪問介護は利用者との一対一のコミュニケーションが基本です。特定技能介護の要件である日本語能力試験N4レベルでは、日常会話は何とかできても、微妙なニュアンスの理解や緊急時の複雑な説明には苦労する可能性があります。
特に、認知症の利用者や方言を使う高齢者とのコミュニケーションでは、言葉の壁が課題となることがあります。利用者の「これ、あれして」といった曖昧な指示を理解したり、体調の微妙な変化を察知したりすることは、高度な日本語力と文化理解が必要です。
対策:
- 継続的な日本語教育の提供:月1回程度、日本語講師による訪問介護で使う日本語の特別研修を実施します。「利用者の訴えを聞き取る」「体調変化を報告する」など、場面ごとの実践的な日本語を学びます。
- コミュニケーションツールの活用:イラストカードやタブレット端末のアプリを活用し、視覚的にコミュニケーションを補完します。
- 訪問先の選定:初期段階では、比較的コミュニケーションが取りやすい利用者から担当し、徐々に難易度を上げていく配慮が有効です。
- ビデオ通話による即時サポート:コミュニケーションで困った際に、事業所の責任者にビデオ通話で状況を見てもらい、アドバイスを受けられる体制を整えます。
デメリット②:文化・習慣の違いによる誤解やトラブル
日本と母国の文化・習慣の違いから、意図せず利用者や家族を不快にさせてしまう可能性があります。例えば、靴の脱ぎ方、お辞儀の仕方、食事のマナー、入浴や排泄介助での配慮など、日本人にとっては当たり前のことが、外国人には理解しづらいこともあります。
また、宗教上の理由で対応できない業務がある場合(例:イスラム教徒の女性が男性利用者の入浴介助ができない)、事前に把握し調整する必要があります。
対策:
- 日本の生活習慣に関する研修の徹底:訪問介護業務の基本事項に関する研修において、日本の生活様式、マナー、タブーなどを丁寧に教育します。実技演習を通じて、身体で覚えてもらうことが重要です。
- 同行訪問での実地指導:利用者宅での振る舞いを同行者が実際に見せ、手本を示します。
- 宗教・文化への配慮:外国人の宗教や文化的背景を事前に確認し、対応できない業務がある場合は、他のスタッフと役割分担を調整します。
デメリット③:緊急時対応への不安
訪問介護では、利用者の容態急変や転倒事故など、緊急事態が発生することがあります。そうした場合に、外国人が冷静に適切な判断と行動ができるかという不安があります。
緊急時は誰でもパニックになりやすく、母国語での思考に戻ってしまい、日本語での報告や119番通報が困難になる可能性があります。
対策:
- 緊急時対応マニュアルの多言語化:緊急時の対応手順を、やさしい日本語と母国語で記載したマニュアルを作成し、常に携帯させます。
- 緊急時対応訓練の実施:定期的に、緊急時を想定したロールプレイング訓練を行います。「利用者が倒れた」「意識がない」といった場面での対応を、繰り返し練習することで、身体に覚えさせます。
- ビデオ通話での即時サポート体制:緊急時は、まず事業所にビデオ通話で連絡し、状況を見てもらいながら指示を受けるルールを徹底します。
- 119番通報カードの携帯:緊急時の119番通報で伝えるべき情報(住所、利用者名、症状など)を記載したカードを常に携帯させ、それを読み上げれば通報できるようにします。
デメリット④:受入準備と継続的支援の負担
訪問介護で特定技能外国人を受け入れる場合、前述の5つの遵守事項を満たすための受入準備や、受入後の継続的な支援に、時間と労力がかかります。
研修プログラムの作成、同行訪問のスケジュール調整、キャリアアップ計画の策定、ICT機器の導入など、人手不足で忙しい中、これらの準備を進めることは、事業所にとって大きな負担となる可能性があります。
対策:
- 登録支援機関の活用:特定技能外国人の受入支援を専門とする登録支援機関に、研修プログラムの作成、書類手続き、定期面談などを委託することで、事業所の負担を大幅に軽減できます。一般社団法人 外国人介護留学生支援機構のような、介護分野に精通した登録支援機関を選ぶことが重要です。
- 段階的な受入れ:最初から複数人を受け入れるのではなく、まず1人を受け入れ、ノウハウを蓄積してから2人目、3人目と増やしていく段階的なアプローチが現実的です。
- 既存の施設サービスからの移行:自法人内の施設サービス(特養、老健、デイサービスなど)で既に特定技能外国人を雇用している場合、その中から希望者を訪問介護に移行させる方法が、ゼロからの採用よりもスムーズです。既に1年以上の実務経験があり、法人の方針や日本の文化にも慣れているため、訪問介護への適応も早いと考えられます。
デメリット⑤:利用者・家族の不安や拒否反応
利用者や家族の中には、外国人による訪問介護に不安を感じたり、抵抗感を示したりする方もいるかもしれません。「言葉が通じるか心配」「文化が違うから合わないのでは」といった懸念や、場合によっては外国人に対する偏見が背景にあることもあります。
対策:
- 丁寧な事前説明:前述の通り、サービス開始前に外国人の経歴、資格、日本語能力、研修内容などを書面と口頭で丁寧に説明します。
- 顔合わせの実施:可能であれば、契約前に外国人本人と利用者・家族が顔を合わせる機会を設け、直接会話してもらうことで、不安が和らぐことが多いです。
- お試し期間の設定:最初の1〜2週間は「お試し期間」として、利用者が納得できなければ担当者を変更できることを伝えると、利用者も安心して受け入れやすくなります。
- 定期的なフォロー:サービス開始後も、サービス提供責任者が定期的に利用者宅を訪問し、困っていることや不安なことがないかを確認します。
受入れ成功のポイント:訪問介護で外国人材が定着・活躍するために
訪問介護で特定技能外国人の受入れを成功させ、長期的に活躍してもらうためには、単に要件を満たすだけでなく、外国人が「この事業所で働き続けたい」と思える環境づくりが不可欠です。
ポイント①:手厚い研修とOJT体制の構築
訪問介護は施設サービス以上に高度な技能とコミュニケーション能力が求められます。そのため、座学研修と実地研修(OJT)を組み合わせた体系的な教育プログラムを構築することが、外国人の不安を取り除き、自信を持って業務に臨めるようにするために重要です。
大阪のある訪問介護事業所では、以下のような段階的な研修プログラムを実施し、外国人の定着率向上に成功しています。
- 入職時研修(3日間):事業所の理念、訪問介護の基本、日本の生活様式、緊急時対応などを座学で学びます。
- 同行訪問研修(4〜6週間):ベテランヘルパーに同行し、実際のサービス提供を見学・実践します。週の後半には振り返りミーティングを行い、不明点や困ったことを共有します。
- 独り立ち後のフォローアップ(3ヶ月間):週1回、責任者が同行訪問し、技術チェックと助言を行います。月1回、外国人同士の勉強会を開催し、悩みや工夫を共有します。
こうした丁寧な研修体制は、外国人だけでなく、新人の日本人職員にとっても有益であり、組織全体の人材育成力の向上につながります。
ポイント②:心理的安全性の確保とメンタルケア
訪問介護は一人で利用者宅を訪問するため、孤独を感じやすく、ストレスが溜まりやすい仕事です。特に外国人の場合、言葉の壁や文化の違いから、日本人以上に心理的負担が大きくなる可能性があります。
心理的安全性を確保し、外国人が安心して働ける環境を作るためには、以下の取り組みが有効です。
- 定期的な個別面談:月1回、責任者が外国人と1対1で面談し、仕事の悩み、生活面の困りごと、キャリアの希望などを聞き取ります。母国語で相談できる窓口(登録支援機関や母国人コミュニティ)の情報も提供します。
- 外国人同士の交流機会:同じ事業所や法人内の外国人同士が集まり、情報交換や悩み相談ができる場を定期的に設けます。同じ境遇の仲間がいることで、孤独感が和らぎます。
- 成功体験の共有:利用者から感謝の言葉をもらった、介護技術が上達したなど、小さな成功体験を事業所全体で共有し、承認する文化を作ります。
- ハラスメント相談窓口の明示:前述の通り、ハラスメントを受けた際に相談できる窓口を明確にし、「困ったことがあればすぐに相談してほしい」というメッセージを繰り返し伝えます。
ポイント③:キャリアパスの明示と資格取得支援
特定技能外国人の多くは、日本で長く働き、キャリアアップしたいという希望を持っています。そうした希望に応え、具体的なキャリアパスを示すことが、モチベーション維持と定着につながります。
訪問介護事業所におけるキャリアパスの例としては、以下のようなものが考えられます。
- 特定技能介護(訪問介護):まずは訪問介護ヘルパーとして経験を積みます。
- 実務者研修の修了:実務経験を積みながら、実務者研修(450時間)を修了します。事業所が受講費用の一部または全額を補助することで、外国人の経済的負担を軽減します。
- サービス提供責任者候補:実務者研修修了後、サービス提供責任者の補佐業務を経験します。
- 介護福祉士国家試験の合格:実務経験3年以上+実務者研修修了で受験資格を得て、介護福祉士国家試験に挑戦します。事業所が国家試験対策講座の受講費用を補助したり、勉強時間確保のためのシフト配慮を行います。
- 在留資格「介護」への変更:介護福祉士国家試験に合格後、在留資格を「介護」に変更し、在留期間の制限がなくなります。
- サービス提供責任者:在留資格「介護」を取得し、一定の経験を積んだ後、サービス提供責任者として、ケアプランの作成や他のヘルパーの指導・育成を担当します。
こうしたキャリアパスを入職時から明示し、定期的に進捗を確認することで、外国人は将来の見通しを持って働くことができます。また、資格取得や昇進に応じた賃金アップや処遇改善を行うことで、頑張りが報われる仕組みを作ることも重要です。
ポイント④:ICTの積極活用による業務負担軽減
訪問介護は移動時間や記録業務など、直接的なケア以外の業務も多く、ICTの活用によって業務負担を軽減することが、外国人の定着に寄与します。
具体的には、以下のようなICTツールの導入が有効です。
- 介護記録アプリ:スマートフォンやタブレットで介護記録を入力できるアプリを導入することで、手書き記録の負担を軽減し、リアルタイムでの情報共有が可能になります。音声入力機能を活用すれば、日本語タイピングが苦手な外国人でも記録が容易になります。
- 訪問スケジュール管理アプリ:訪問先や訪問時間をアプリで管理し、地図アプリと連動させることで、迷わずに訪問先に到着できます。
- ビデオ通話機能:緊急時や判断に迷う場面で、責任者にビデオ通話で相談できる体制は、外国人の安心感につながります。
- 翻訳アプリ(補助的使用):利用者とのコミュニケーションで、どうしても伝わらない場合の補助ツールとして、翻訳アプリを用意しておくことも一つの方法です。
ICTの導入には初期費用がかかりますが、厚生労働省の「介護人材が働きやすい職場環境の構築支援」事業などの補助金を活用できる場合があります。また、ICT導入は外国人だけでなく、日本人職員の業務効率化にもつながるため、事業所全体の生産性向上に寄与します。
ポイント⑤:地域社会との連携と生活支援
外国人が日本で安心して暮らし、働き続けるためには、仕事だけでなく、生活面でのサポートも重要です。
一般社団法人 外国人介護留学生支援機構のような登録支援機関は、以下のような生活支援を提供しています。
- 住居の確保(賃貸契約の補助、保証人対応など)
- 銀行口座開設、携帯電話契約の支援
- 病院受診時の同行通訳
- 日本の生活ルールやマナーの説明
- 定期的な面談と相談対応
- 母国人コミュニティの紹介
事業所自身がすべてを対応することは困難ですが、登録支援機関と連携し、外国人の生活面での困りごとを早期に把握し、解決に導くことで、仕事に集中できる環境を整えることができます。
また、地域の国際交流協会や外国人支援団体とつながり、日本語教室や交流イベントの情報を提供することも、外国人の地域社会への適応を促進します。大阪市には「大阪市立総合生涯学習センター」や各区の「国際交流センター」など、外国人支援のリソースが豊富にあります。こうした地域資源を活用することで、事業所単独では難しい支援も可能になります。
特定技能外国人の採用から受入れまでの流れ:訪問介護への配置を想定して
訪問介護で特定技能外国人を受け入れる場合、どのような流れで進めればよいのでしょうか。ここでは、新規採用から訪問介護への配置までの一般的な流れを解説します。
ステップ①:受入体制の整備と計画策定
まず、事業所内で外国人受入れのための体制を整備します。
- 経営層や管理職の合意形成
- 受入れ担当者・指導担当者の選定
- 研修プログラムの作成(または登録支援機関に委託)
- 受入れ人数と配置計画の策定
- 必要な設備・ICT機器の検討
訪問介護への配置を想定する場合、施設サービスでの実務経験1年以上という要件があるため、まず自法人の施設サービス(特養、老健、デイサービスなど)で1年以上雇用し、その後訪問介護に移行させるという長期的な計画を立てることが現実的です。
あるいは、既に他の施設で1年以上の実務経験を持つ特定技能外国人を、転職という形で採用する方法もあります。
ステップ②:人材の募集・選考
特定技能外国人の募集方法には、以下のようなものがあります。
- 登録支援機関経由:一般社団法人 外国人介護留学生支援機構のような登録支援機関は、国内外に人材ネットワークを持っており、事業所の希望に合った人材を紹介してくれます。採用決定まで無料の機関もあります。
- 海外の送出機関経由:ベトナム、インドネシア、フィリピンなどの送出機関を通じて、海外から直接採用する方法もあります。ただし、入国までに時間がかかる(数ヶ月〜半年)ことや、来日後の適応支援が必要になることに注意が必要です。
- 国内在住の特定技能外国人の転職:既に日本で特定技能介護として働いている外国人の中には、転職を希望する者もいます。求人サイトやハローワークを通じて募集することも可能です。
選考では、日本語能力、介護技能、コミュニケーション能力、人柄、勤務意欲などを総合的に評価します。可能であれば、面接だけでなく、実技試験や施設見学を実施し、お互いのミスマッチを防ぐことが重要です。
ステップ③:雇用契約の締結と支援計画の作成
採用が決まったら、特定技能雇用契約を締結します。契約内容は、日本人と同等以上の報酬を支払うことが要件です。また、1号特定技能外国人支援計画を作成し、以下の支援を実施することを定めます。
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(契約終了時)
- 定期的な面談
これらの支援は、事業所が自ら実施する(自社支援)か、登録支援機関に委託することができます。多くの事業所は、専門性とノウハウを持つ登録支援機関に委託しています。
ステップ④:在留資格認定証明書の交付申請
海外から呼び寄せる場合は、出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付申請を行います。必要書類は以下の通りです(介護分野の場合)。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 介護分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書
- 介護分野における業務を行わせる事業所の概要書
- 介護技能評価試験・介護日本語評価試験の合格証明書
- 日本語能力を証する書類
- その他(登記事項証明書、決算書類など)
審査には1〜3ヶ月程度かかります。認定証明書が交付されたら、外国人に送付し、母国の日本大使館・領事館でビザ(査証)の発給を受けて来日します。
既に日本に在住している外国人を採用する場合は、在留資格変更許可申請を行います。
ステップ⑤:施設サービスでの就労開始と実務経験の蓄積
来日後、まずは法人内の施設サービス(特養、老健、デイサービス、グループホームなど)で就労を開始します。この段階では、訪問介護ではなく、施設での介護業務に従事します。
入職時研修、OJT、定期的な面談などを通じて、日本の介護技術、コミュニケーション方法、記録の書き方などを習得していきます。同時に、介護職員初任者研修をまだ修了していない場合は、この期間に研修を受講し、修了証を取得します。
実務経験1年が経過するまでの間に、外国人本人の適性や希望を確認し、訪問介護への移行が適切かどうかを判断します。
ステップ⑥:訪問系サービスの要件に係る報告書の作成と提出
実務経験1年が近づいたら、訪問介護への移行準備を開始します。前述の5つの遵守事項を満たすための体制・計画を整備し、「訪問系サービスの要件に係る報告書」を作成します。
報告書には、以下の内容を記載します。
- 事業所の概要
- 訪問介護業務の基本事項等に関する研修の実施計画
- 同行訪問によるOJTの実施計画
- キャリアアップ計画の作成方針
- ハラスメント防止対策の内容
- ICT活用を含む環境整備の内容
作成した報告書を、国際厚生事業団の専用ページから提出し、適合確認を受けます。適合確認書が発行されるまでに、数週間〜1ヶ月程度かかる場合があります。
ステップ⑦:訪問介護業務の研修とOJTの実施
適合確認書が発行されたら、訪問介護業務に従事させることができます。ただし、いきなり一人で訪問させるのではなく、訪問介護業務の基本事項等に関する研修を実施してから、同行訪問によるOJTを行います。
研修では、利用者宅でのサービス提供の流れ、生活支援技術、コミュニケーション方法、日本の生活様式、緊急時対応などを学びます。実技演習を含めることで、実践的なスキルを身につけます。
研修後、ベテランヘルパーや責任者に同行し、実際の訪問介護を経験します。同行期間は4〜6週間程度が一般的ですが、外国人の習熟度に応じて柔軟に調整します。同行訪問中は、厚生労働省の「同行訪問チェックシート」を活用し、到達度を記録・評価します。
ステップ⑧:キャリアアップ計画の作成と提出
外国人本人と話し合いながら、キャリアアップ計画を作成します。計画には、従事する業務内容、短期・長期目標、研修計画、キャリアパス、本人の意向などを記載します。
作成したキャリアアップ計画書は、特定技能協議会事務局(国際厚生事業団)に提出します。提出は、訪問介護業務に従事させる前、または従事開始後速やかに行います。
ステップ⑨:利用者・家族への事前説明
外国人が担当する利用者とその家族に対して、事前に丁寧な説明を行います。説明書面を交付し、署名をもらいます。可能であれば、外国人本人も同席して顔合わせを行うと、利用者の安心感が高まります。
ステップ⑩:訪問介護業務の開始と継続的サポート
OJTを経て、外国人が一人で訪問できると判断されたら、訪問介護業務を開始します。ただし、独り立ち後も、以下のような継続的なサポートが重要です。
- 定期的な同行訪問によるスキルチェック(月1回程度)
- 月1回の個別面談
- ビデオ通話での即時サポート体制の維持
- 外国人同士の勉強会や交流会の開催
- 日本語教育の継続
- キャリアアップ計画の進捗確認と見直し(6ヶ月〜1年ごと)
こうした継続的なサポートを通じて、外国人が安心して働き続けられる環境を維持することが、長期的な定着につながります。
登録支援機関の活用:専門家の力を借りて受入れを成功させる
特定技能外国人を訪問介護に受け入れる際、すべてを事業所単独で行うことは、時間的にも専門知識的にも大きな負担となります。そこで、登録支援機関の活用が、受入れ成功の鍵となります。
登録支援機関とは
登録支援機関とは、特定技能外国人の受入れ支援を行うことを出入国在留管理庁に登録された機関です。事業所に代わって、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援業務を実施します。
登録支援機関が提供する主なサービスは以下の通りです。
- 人材紹介・マッチング
- 在留資格申請の書類作成・代行
- 入国前の事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住居確保・生活契約支援
- 生活オリエンテーション
- 日本語教育の提供
- 定期的な面談と相談対応(母国語対応可)
- 行政手続きの同行
- 日本人との交流促進
- トラブル対応・緊急時サポート
訪問介護における登録支援機関の重要性
訪問介護で特定技能外国人を受け入れる場合、施設サービス以上に登録支援機関の専門的サポートが重要となります。その理由は以下の通りです。
- 訪問系サービス特有の要件対応:5つの遵守事項を満たすための研修プログラム作成、適合確認書の申請手続き、キャリアアップ計画の策定など、専門的な知識と経験が求められます。登録支援機関はこれらのノウハウを持っており、スムーズな受入れをサポートできます。
- 継続的なメンタルケア:訪問介護は孤独を感じやすい仕事です。登録支援機関の定期面談(母国語対応可)により、外国人の不安や悩みを早期に把握し、メンタル面でのサポートを行うことができます。
- トラブル対応の迅速化:利用者とのトラブル、ハラスメント、体調不良など、問題が発生した際に、登録支援機関が仲介・調整役として機能し、早期解決を図ることができます。
- 事業所の負担軽減:訪問介護事業所は人手不足で忙しく、外国人支援に十分な時間を割けないことが多いです。登録支援機関に委託することで、事業所は本業に集中できます。
登録支援機関の選び方
登録支援機関は全国に多数存在しますが、介護分野に精通し、訪問介護の特性を理解している機関を選ぶことが重要です。選定のポイントとしては、以下のような点が挙げられます。
- 介護分野での実績:介護施設・事業所への特定技能外国人紹介・支援の実績が豊富か。
- 訪問介護への理解:訪問介護特有の要件や課題を理解し、適切なサポートができるか。
- 地域性:大阪など、事業所の所在地に近く、必要時に迅速に対応できるか。
- 母国語対応:外国人の母国語(ベトナム語、インドネシア語、ミャンマー語など)で相談対応ができるスタッフがいるか。
- 費用の透明性:支援委託費用が明確で、追加費用が発生する場合の説明が事前にあるか。
- 教育・研修サポート:日本語教育、介護技術研修、国家試験対策など、スキルアップ支援が充実しているか。
一般社団法人 外国人介護留学生支援機構は、大阪を拠点とし、介護分野に特化した登録支援機関として、採用決定まで完全無料、ビザ申請から入社後フォローまで一気通貫でサポートしています。ベトナム、ネパール等のアジア人材との強固なネットワークを持ち、訪問介護への配置にも対応可能です。訪問介護での外国人受入れをご検討の際は、こうした専門機関への相談をお勧めします。
まとめ:特定技能訪問介護は人手不足解消の新たな選択肢
2025年4月21日に解禁された特定技能外国人による訪問介護は、深刻な訪問介護員不足に悩む事業所にとって、新たな人材確保の選択肢として大きな可能性を秘めています。
本記事で解説した通り、訪問介護で特定技能外国人を受け入れるためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 外国人本人の要件:介護職員初任者研修修了、実務経験1年以上、訪問介護業務の基本事項に関する研修受講
- 事業所の5つの遵守事項:①研修の実施、②同行訪問によるOJT、③キャリアアップ計画の作成、④ハラスメント防止対策、⑤ICTを含む環境整備
- 適合確認の取得:特定技能協議会(国際厚生事業団)から、遵守事項に適合していることの確認を受ける
- 利用者・家族への事前説明:書面交付と署名による同意取得
- 受入れ成功のポイント:手厚い研修とOJT、心理的安全性の確保、キャリアパスの明示、ICTの活用、登録支援機関との連携
施設サービスと比べ、訪問介護は一対一のサービス提供という特性上、コミュニケーション能力や緊急時対応力がより求められます。そのため、受入れには一定の準備と継続的なサポートが必要です。しかし、適切な体制を整え、登録支援機関などの専門家の力を借りることで、外国人材は訪問介護の現場でも十分に活躍できます。
大阪をはじめ全国の訪問介護事業所において、特定技能外国人の受入れが進み、利用者に質の高いサービスが提供され続けることを願っています。外国人材と日本人職員が共に働き、お互いを尊重し合う職場は、利用者にとっても、職員にとっても、そして地域社会にとっても、より豊かな未来につながるはずです。
訪問介護における特定技能外国人の受入れをご検討の事業所様は、まずは介護分野に精通した登録支援機関にご相談されることをお勧めします。一般社団法人 外国人介護留学生支援機構では、訪問介護への配置を含め、採用から定着まで一気通貫でサポートしています。お気軽にお問い合わせください。
監修青山 信明
2018年から一般社団法人外国人介護留学生支援機構にて、日本で介護職を目指す外国人留学生の生活支援および就職支援を担当。ベトナム・ネパール・インド国籍の学生支援に従事する。
特定技能制度施行後は、同機構が登録支援機関として認可を受ける過程にも関与し、現在は主にベトナム国籍人材を中心とした特定技能外国人の支援業務を行っている。
執筆者コネクトナビ編集部
外国人材採用に役立つ情報を随時発信しています。
