2026.06.19

【特定技能】自社支援とは?要件やメリット・デメリット、切り替えの手続きを徹底解説

特定技能外国人を雇用している、あるいはこれから受け入れを検討している中で、「毎月の登録支援機関への委託費用が負担になっている」「自社で支援を行えないだろうか」と悩む企業担当者は少なくありません。

特定技能制度では、外国人材が日本で安心して生活・就労できるようにサポートする「支援」が義務付けられており、これを自社で行うことを「自社支援」と呼びます。

自社支援への切り替えはコスト削減や定着率向上といった恩恵をもたらす一方で、厳しい要件や複雑な手続きをクリアしなければなりません。

読者が自社に最適な選択ができるよう、自社支援の要件やメリット・デメリット、切り替えの手続きについて詳しく解説していきます。

この記事のポイント

  • 特定技能の自社支援は委託費用を削減できるが、厳しい要件がある
  • 企業には外国人材の雇用・管理実績や多言語対応体制が求められる
  • 支援担当者には過去の相談業務実績と「中立性」が必須となる
  • 法定の「義務的支援10項目」をすべて自社で実施する労力が必要
  • 自社支援か委託かは、社内リソースと費用のバランスを見て判断すべき

「特定技能の自社支援」とは?登録支援機関への委託との違い

特定技能外国人を受け入れる際、企業は「自社で支援を行う」か「登録支援機関に委託する」かのどちらかを選択しなければなりません。

結論からお伝えすると、どちらを選ぶべきかは「社内の人的リソースの余裕」と「委託費用の負担」のバランスによって決まります。まずは制度の違いと費用相場を比較表で確認してみましょう。

比較項目 自社支援 登録支援機関への委託
支援の実施主体 受け入れ企業(自社) 登録支援機関(外部委託)
費用相場(1人あたり) 社内の人件費+通訳・システム等の実費 月額2万〜3万円程度(年間24万〜36万円)
求められる要件 過去の雇用管理実績、多言語対応、担当者の中立性など 企業側の特別な要件はなし
メリット 外部委託費用を削減できる、外国人材との信頼関係が深まる 専門家に任せられるため社内業務の負担が軽い、法改正にも対応しやすい
デメリット 要件クリアのハードルが高い、業務負担が増加する 毎月のランニングコストがかかる

自社支援は外部への支出を抑えられる反面、社内の担当者に大きな業務負担がかかります。一方、登録支援機関への委託はランニングコストが発生するものの、複雑な手続きやトラブル対応を専門家に任せられる安心感があります。

自社に向いている支援方法の判断基準としては、「過去に外国人材の受け入れ実績が豊富にあるか」「支援業務に専念できる人員を確保できるか」が重要なポイントとなるでしょう。

特定技能制度における支援の義務と自社支援の定義

特定技能制度(1号)を利用して外国人材を雇用する場合、出入国管理及び難民認定法(入管法)により、受け入れ企業は「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、それに基づいたサポートを実施する法的義務を負います。

このサポートは、外国人材が日本での生活にスムーズに適応し、安定して長く働けるようにするための重要な枠組みです。

そして、外部の登録支援機関に業務を委託せず、企業自らがこの支援計画を策定して直接サポートを実施することを「自社支援」と定義しています。自社支援を選択した場合、支援に関するすべての責任は自社が負うことになります。

登録支援機関へ委託する場合との違い・比較

支援業務を自社で行うか、それとも登録支援機関に任せるかによって、企業が担う役割は大きく変わってきます。

登録支援機関は、特定技能外国人の支援を専門に行う機関として国から認められており、入管法や関連法令に関する高度な専門知識を持っています。支援計画の策定から生活サポート、定期的な行政への報告までを一任できるため、人事担当者の負担を大幅に軽減できるのが特徴です。

また、外部機関であるため、外国人材と企業の間で何らかのトラブルが発生した際にも、中立的な立場で問題解決に向けた調整を行いやすいという利点もあります。自社支援の場合は、これらすべての専門的かつ中立的な対応を自社内のリソースだけで完結させなければなりません。

特定技能を「自社支援」で行うメリット・デメリット

自社支援への切り替えを検討するうえで、経済的な恩恵だけでなく、社内にもたらす影響を多角的に把握しておく必要があります。ここでは、具体的なメリットとデメリットを整理して解説します。

自社支援のメリット(コスト削減、定着率向上など)

自社支援の最大の魅力は、やはり毎月のランニングコストを削減できる点にあります。登録支援機関に委託する場合、外国人材1人あたり月額2万〜3万円程度の費用が発生します。もし5人の外国人材を雇用していれば、年間で120万〜180万円ほどのコストがかかる計算です。自社支援に切り替えれば、この外部委託費用をなくすことができます。

さらに、費用面だけでなく「外国人材の定着率向上」という潜在的なメリットも見逃せません。自社の従業員が直接サポートを行うことで、日々の細かなコミュニケーションが増え、強固な信頼関係を築きやすくなります。

生活上の悩みや職場での困りごとに対して迅速に対応できるため、外国人材の安心感が高まり、結果として離職を防ぐことにつながるでしょう。支援を通じて蓄積された異文化コミュニケーションのノウハウは、今後の外国人材採用においても貴重な財産となります。

自社支援のデメリット(時間的コスト、専門知識の必要性など)

一方で、自社支援には目に見えにくいコストや負担が伴う点に注意が必要です。

法定の義務的支援を実施するためには、担当者が入国時の送迎や住居確保、役所での手続き同行などを行う必要があり、多大な時間と労力を割かなければなりません。専任の担当者を配置できない場合、既存の業務と兼任することになり、担当者の疲弊や通常業務への支障を招く恐れがあります。

加えて、入管法や労働法に関する専門知識を継続的にアップデートしていく必要もあります。特定技能制度は法改正やルール変更が頻繁に行われるため、常に最新の情報を把握しておかなければ、意図せず法令違反を犯してしまうリスクを抱えることになります。また、母国語での対応が求められる場面も多く、外部の通訳サービスを利用する場合は別途費用が発生することも考慮しておきましょう。

【失敗事例】
ここで、自社支援への切り替えでつまずいてしまった失敗事例を紹介します。

  • 支援体制不足で早期離職した
    委託費用を削減する目的だけで自社支援に切り替えたものの、担当者が通常業務に追われて定期面談や日々の相談対応がおろそかになってしまいました。結果として外国人材が孤立感を深め、わずか数ヶ月で離職してしまう事態に発展したケースです。
  • 制度理解不足で手続きが滞った
    担当者の法令知識が不足していたため、出入国在留管理庁へ提出すべき定期報告書の期限に遅れたり、記載内容に不備があったりして行政指導を受け、その後の在留資格更新に悪影響を及ぼしてしまった事例もあります。

このように、費用削減だけを目的として見切り発車で自社支援を始めると、かえって大きな損失を生む可能性があります。

海外人材コネクトナビでは、外国人採用を支援する企業や登録支援機関を比較できます。自社支援のハードルが高いと感じた場合や、まずはプロのサポートを受けたいとお考えの際は、費用や支援内容を比較して自社に合ったパートナーを探してみてください。

特定技能の自社支援が認められるための厳しい要件

自社支援は、希望すればどの企業でもすぐに行えるわけではありません。外国人材の権利を守り、適切なサポートを提供できる体制があるかを判断するため、企業および担当者には厳格な要件が定められています。

受入れ企業(特定技能所属機関)が満たすべき要件

企業が自社支援を行うためには、まず「中長期在留者の雇用・管理実績」が求められます。具体的には、過去2年以内に就労系の在留資格を持つ外国人材(技能実習生や特定技能外国人など)を1名以上雇用し、法令違反なく適切に管理してきた実績が必要です。

また、「外国語対応体制」も重要な要件です。外国人材が十分に理解できる言語(原則として母国語)で、日常の相談や緊急時の対応ができる体制を整えなければなりません。社内に多言語対応できるスタッフがいなければ、外部の通訳サービス等と契約して体制を構築する必要があります。

さらに、実施した支援内容を文書として記録し、雇用契約終了後も1年以上適切に保管する体制も義務付けられています。

支援責任者および支援担当者が満たすべき要件

支援を実際に取り仕切る「支援責任者」と「支援担当者」にも厳しい条件があります。

担当者は、過去2年以内に中長期在留者の生活相談業務に業務として従事した経験を持っていなければなりません。

そして、最もハードルが高いとされているのが「中立性の確保」です。支援担当者は、外国人材に対して業務上の指揮命令権を持つ部署(直属の上司など)に所属していてはいけません。また、役員の親族(2親等以内)が担当することも認められません。

これは、外国人材が職場での不満やトラブルを忖度なく相談できる環境を担保するためのルールです。規模の小さい企業では、この中立な立場にある人材を確保することが大きな課題となる傾向にあります。

【自社支援の要件クリア確認チェックリスト】
□ 過去2年以内に外国人材の雇用・管理実績がある
□ 外国人材の母国語で対応できる体制(通訳含む)がある
□ 支援業務の記録を作成し、適切に保管する仕組みがある
□ 支援担当者に過去の生活相談業務の実績がある
□ 支援担当者が外国人材の直属の上司ではなく、中立な立場である
□ 支援業務に割ける十分な時間と人的リソースがある

自社支援で実施する「義務的支援」と「任意的支援」の内容

自社支援の要件をクリアした場合、具体的にどのようなサポートを提供していくのでしょうか。法令で義務付けられている内容と、企業が自主的に行う内容について整理します。

必ず実施すべき義務的支援10項目のリストと内容

1号特定技能外国人を受け入れる場合、以下の10項目の支援を必ず実施しなければなりません。

  1. 事前ガイダンス:入国前(または在留資格変更前)に、労働条件や日本の生活に関する情報を母国語等で3時間以上かけて説明します。
  2. 出入国時の送迎:入国時に空港から事業所や住居まで送迎し、帰国時も空港まで同行して保安検査場への入場を見届けます。
  3. 住居確保・生活契約の支援:十分な広さ(1人あたり7.5㎡以上)の住居を探す手伝いや、銀行口座の開設、携帯電話・ライフラインの契約をサポートします。
  4. 生活オリエンテーション:日本のルールやマナー、医療機関の利用方法、防災知識などを8時間以上かけて詳しく説明します。
  5. 公的手続きへの同行:住民登録や税金、年金などの役所手続きに同行し、必要に応じてサポートを行います。
  6. 日本語学習の機会の提供:日本語教室の案内や教材の提供など、日本語能力を向上させるための支援を行います。
  7. 相談・苦情への対応:職場や生活における悩み相談に母国語等で対応し、適切なアドバイスや関係機関への案内を行います。
  8. 日本人との交流促進:地域のお祭りやボランティア活動などのイベント情報を案内し、地域社会への参加を後押しします。
  9. 転職支援:企業の都合で雇用契約を解除せざるを得ない場合、次の就職先を探すための支援(ハローワークの同行など)を行います。
  10. 定期的な面談と行政への通報:3ヶ月に1回以上、本人およびその監督者と面談を実施します。もし労働基準法違反などを把握した場合は、速やかに行政機関へ通報する義務があります。

さらに定着率を高める任意的支援とは

義務的支援とは別に、企業が独自の判断でプラスアルファのサポートを行う「任意的支援」もあります。

例えば、日本語能力試験(JLPT)の受験費用を会社が負担したり、資格取得時に報奨金を支給したりする制度などが該当します。また、定期的な社内交流会や懇親会を開催してコミュニケーションを活性化させる取り組みも効果的です。

これらは法令上の義務ではありませんが、外国人材のモチベーションを高め、長期的な定着を促すための重要な施策と言えます。ただし、任意的支援の内容を支援計画書に記載した場合は、それらを確実に実行する責任が生じるため注意が必要です。

登録支援機関の委託から自社支援へ切り替える手続き・流れ

現在登録支援機関を利用している企業が自社支援へ移行するためには、出入国在留管理庁への正確な手続きが求められます。手続きに不備があると、外国人材の就労に影響が出る可能性があるため、慎重に進めましょう。

自社支援開始・切り替えまでの全体ステップ

切り替えは以下の手順で進めていきます。

第一のステップとして、自社が支援体制の要件(実績、中立性、外国語対応など)を本当に満たしているか社内で確認し、要件に合致する支援責任者と担当者を選任します。
次に、新たな「1号特定技能外国人支援計画書」を自社で作成します。

準備が整ったら、現在契約している登録支援機関に契約解除の申し入れを行い、外国人材本人にも支援体制が変わることを丁寧に説明して理解を得ます。
その後、管轄の出入国在留管理庁へ必要な届出書類を提出し、受理されることで正式に自社支援への切り替えが完了となります。

手続きに必要な書類一覧と提出期限

自社支援への切り替えに際しては、複数の書類を作成して提出しなければなりません。

  • 支援委託契約に係る届出書(参考様式第3-3号)
    登録支援機関との委託契約が終了したことを報告する書類です。契約終了から14日以内に提出する義務があります。
  • 支援計画変更に係る届出書(参考様式第3-2号)
    支援の主体が外部機関から自社へ変更になったことを届け出るための書類です。
  • 1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)
    自社で策定した新しい支援計画書です。外国人材が理解できる言語に翻訳した文書も添付し、本人の署名をもらう必要があります。
  • 特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11号)
    企業の過去の雇用実績や支援体制が整っていることを証明する書類です。
  • 受け入れ企業の組織図
    支援担当者が外国人材の直属の上司ではなく、中立的な立場であることを客観的に示すために添付します。

これらの書類は審査の重要な判断材料となるため、記載漏れや誤りがないように細心の注意を払いましょう。

自社支援をコンプライアンス違反なく成功させるポイント

自社支援は開始して終わりではなく、継続的に法令を遵守しながら運用していく体制づくりが不可欠です。

支援の形骸化を防ぐ体制づくりと専門家(行政書士)の活用

自社支援を成功に導くためには、支援業務が形骸化しない仕組みを構築することが重要です。

「誰が・いつ・どのような支援を行ったか」を社内で共有できる管理ツールを導入したり、支援担当者の業務負担を定期的に見直したりして、特定の社員に負荷が集中しないように配慮しましょう。

また、頻繁に行われる入管法の改正や、複雑な在留資格の更新手続き、定期報告書の作成などをすべて自社で完結させることに不安を感じる企業も多いはずです。
そのような場合は、支援の実施そのものは自社で行いながら、出入国在留管理庁への申請や届出書類の作成のみを行政書士などの専門家に依頼するという選択肢もあります。

専門家の力を部分的に活用することで、コンプライアンス違反のリスクを回避しつつ、効率的に自社支援を運用していくことが可能になります。

まとめ:特定技能の自社支援は会社の状況に合わせて慎重に検討しよう

特定技能の自社支援は、外部への委託費用を大幅に削減できるだけでなく、外国人材とのコミュニケーションを深め、職場への定着率を高める効果が期待できます。

しかし一方で、法令で定められた10項目の義務的支援をすべて自社で遂行するための時間や労力は決して軽くありません。支援担当者の中立性の確保や外国語対応体制の構築など、クリアすべき要件も厳しく設定されています。

「コストを下げたい」という理由だけで安易に切り替えるのではなく、自社の人的リソースや外国人材の受け入れ人数、これまでの管理ノウハウなどを総合的に比較検討したうえで判断することが大切です。

外国人採用で失敗しないためには、制度や費用、支援内容を比較したうえで、自社に合った採用方法を選ぶことが重要です。海外人材コネクトナビ掲載企業を比較し、自社に最適なパートナーへ相談してください。

執筆者コネクトナビ編集部

外国人材採用に役立つ情報を随時発信しています。


監修青山 信明

2018年から一般社団法人外国人介護留学生支援機構にて、日本で介護職を目指す外国人留学生の生活支援および就職支援を担当。ベトナム・ネパール・インド国籍の学生支援に従事する。
特定技能制度施行後は、同機構が登録支援機関として認可を受ける過程にも関与し、現在は主にベトナム国籍人材を中心とした特定技能外国人の支援業務を行っている。

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よくある質問

特定技能外国人の自社支援にライセンスや許可は必要ですか?
登録支援機関のような特別なライセンスは必要ありません。ただし、入管法で定められた「雇用実績」「多言語対応」「担当者の中立性」といった厳しい要件をすべて満たしていることを証明する必要があります。
費用はいくらかかりますか?
登録支援機関に支払う委託費用(月額2万〜3万円程度)はゼロになりますが、代わりに社内の人件費が発生します。また、社内に通訳ができる人材がいない場合は、外部の通訳サービスを利用する実費や、面談や送迎のための交通費などが別途必要になります。
日本語レベルはどの程度必要ですか?
特定技能外国人は一定の日本語能力(N4相当以上)を持っていますが、複雑な役所の手続きや深刻な悩み相談などは日本語だけでは難しいケースが多々あります。そのため、制度上は「外国人が十分に理解できる言語(母国語など)」での支援体制を整えることが義務付けられています。
小規模な会社でも自社支援は可能ですか?
可能ですが、最大の壁となるのが「支援担当者の中立性の確保」です。社長や現場の責任者が直接支援担当者になることは認められないため、外国人材に対して指揮命令権を持たない別部署のスタッフを確保できるかどうかが鍵となります。