2026.06.11

特定技能の初期費用はいくら?相場・内訳とコスト削減の秘訣を徹底解説

「特定技能外国人を採用したいが、初期費用がいくらかかるのか見当がつかない」
「人材紹介料やビザ申請費用など、項目が多すぎて予算が組めない」

特定技能制度を活用して人手不足を解消したいと考える企業の多くが、こうした費用の不透明さに直面します。

予算が立てられない原因は、採用ルート(国内・海外)や依頼する登録支援機関によって、必要な費用の内訳が大きく変動するためです。また、企業が負担すべき費用と外国人本人が負担できる費用の法的な線引きが複雑なことも、混乱を招く要因となっています。

特定技能外国人の採用費用は、事前にルート別の相場を把握することで、大幅に抑えることが可能です。

適切な採用ルートを選び、自社で対応できる範囲を明確にすれば、無駄な手数料を省きつつ、法令を遵守したクリーンな採用が実現します。
【この記事の要約】
・特定技能の初期費用は採用ルートによって約15万〜185万円と大きく変動する
・人材紹介料、渡航費、住居準備費などの内訳を正確に把握して予算を立てる必要がある
・支援委託費など企業が負担すべき費用を外国人本人へ負担させる行為は法令違反となる
・国内採用や技能実習からの移行を選択すれば大幅なコスト削減が見込める

この記事のポイントは?

特定技能の受け入れにかかる費用の全体像

特定技能外国人を採用する際の費用は、入社までに発生する「初期費用」と、雇用期間中に発生する「継続費用」に分かれます。費用の性質を切り分けて考えることが、正確な予算策定の第一歩です。

初期費用(イニシャルコスト)と継続費用(ランニングコスト)の違い

初期費用は採用決定から就労開始までに一括で発生するコストです。人材紹介手数料やビザ申請費用、住居の確保などがこれに該当します。採用方法によって数十万円から百万円以上と幅が広く、経営層への事前説明が最も求められる部分です。

継続費用は、給与や社会保険料のほか、登録支援機関への月額委託費や在留期間の更新費用など、毎月または定期的に発生するランニングコストを指します。入社前の予算化で最も苦労するのは初期費用ですが、採用後の利益率を圧迫しないためには継続費用のシミュレーションも欠かせません。

【項目別】特定技能の初期費用の詳細な内訳と相場

初期費用は主に7つの項目に分類されます。それぞれの相場と変動要因を把握し、自社の採用計画に当てはめることが重要です。

費用項目 相場目安 備考・変動要因
人材紹介手数料 10万~80万円 固定制または年収の20〜30%。サポート範囲で変動。
送出し機関手数料 10万~60万円 海外採用時のみ。国によって制度や相場が異なる。
在留資格申請費用 10万~20万円 行政書士への依頼費用。手続きの難易度で変動。
渡航費 4万~15万円 海外採用時のみ。時期や航空会社によって変動。
住居準備費 10万~50万円 敷金礼金、家具家電など。社宅の有無で大きく変わる。
支援初期費用 5万~30万円 登録支援機関への初期費用や事前ガイダンス費用。
健康診断費用 5千円~1万円 在留資格申請時および入社時に必要。

1. 人材紹介手数料(相場:10万~80万円)

人材紹介会社を利用して候補者を探す場合に発生する費用です。料金体系は、1人あたりいくらという「固定料金制」と、想定年収の20〜30%を支払う「定率制」に分かれます。

職種の難易度や候補者の日本語レベルによって金額が変わるほか、ビザ申請のサポートや入社後の定着フォローが含まれているかどうかも確認が必要です。自社で直接採用する場合は、この費用をゼロに抑えることができます。

2. 送出し機関への手数料(相場:10万~60万円)

海外に住む外国人を採用する場合に発生する費用です。日本と二国間協定(MOC)を結んでいるフィリピンやベトナム、カンボジアなどの国では、現地の「送出し機関」を経由することが義務付けられています。

国によって相場や制度が異なり、例えばベトナムでは20万〜40万円、フィリピンでは15万〜30万円が目安です。最新の協定内容は出入国在留管理庁の公式情報を確認する必要があります。

3. 在留資格申請費用・行政書士委託費(相場:10万~20万円)

在留資格の認定証明書交付申請(海外からの招聘)や変更許可申請(国内での転職)にかかる費用です。出入国在留管理庁への申請手数料自体は数千円ですが、提出書類が膨大で専門知識を要します。

そのため、大半の企業は行政書士や登録支援機関へ手続きを委託しています。依頼する専門家や申請の難易度によって、10万円から20万円程度の報酬が発生するのが一般的です。

4. 渡航費(相場:4万~15万円)

海外から人材を呼び寄せる際の航空券代や、日本の空港から配属先までの国内移動費です。採用する時期(繁忙期など)や利用する航空会社によって金額が変動します。

渡航費の負担区分は、基本的には企業負担が推奨されています。送出国との二国間協定によっては企業負担が厳格に義務付けられているケースもあるため、事前に確認を怠らないことが重要です。

5. 住居準備費(敷金・礼金など)(相場:10万~50万円以上)

特定技能外国人が生活するための住環境を整える費用です。賃貸物件を新たに借り上げる場合、敷金・礼金、仲介手数料、保証会社利用料が初期費用として重くのしかかります。

さらに、生活に必要な家具や家電、布団などの準備も求められます。自社で保有する社宅や寮を活用できる場合、この費用を大幅に圧縮することが可能です。地方と都市部でも家賃相場による差額が生じます。

6. 支援初期費用・健康診断費用(相場:5万~30万円)

特定技能外国人の入国前に実施する「事前ガイダンス」や、入国直後の「生活オリエンテーション」にかかる費用です。登録支援機関へ委託する場合、月額支援費とは別に初期パッケージ料金として請求されることが一般的です。

また、在留資格の申請時および就労開始時に健康診断書の提出が義務付けられています。健康診断の費用(約1万円)は企業負担が法的な義務ではありませんが、採用をスムーズに進めるために企業が負担するケースが多数を占めます。

7. 見落としがちな「隠れコスト」(通信費・移動費など)

予算策定時に見落とされがちな費用として、入国直後の生活インフラ整備費が挙げられます。スマートフォンやWi-Fiの新規契約にかかる初期費用、役所手続きに同行する際の交通費などです。

また、登録支援機関の基本サービスに含まれない重要書類の翻訳費用や、緊急時の通訳費用が追加で発生することもあります。予期せぬ出費に備え、1人あたり数万円の予備費を見込んでおくことが安全です。

どの支援会社を選ぶべきか迷った場合は、海外人材コネクトナビ掲載企業を比較してください。自社の採用予算に合ったサポート体制を見つけることが可能です。

【採用ルート別】初期費用の総額シミュレーション

採用するルートによって初期費用の総額は100万円以上変動します。経営層への予算説明にそのまま活用できる、ケース別の費用シミュレーションを解説します。

パターン1:海外から新規で採用する場合(約75万~185万円)

海外在住者を新たに探し出し、日本へ呼び寄せるルートです。人材紹介手数料に加え、現地の送出し機関への手数料、渡航費、住居準備費などすべての項目が発生します。

最も初期費用が高額になるルートですが、国内で採用が難しい職種や、まとまった人数の確保が必要な場合に選択されます。初期投資に見合う人材を選定する採用力が問われます。

パターン2:国内在住の外国人(留学生等)を採用する場合(約25万~95万円)

すでに日本に住んでいる留学生や、他の企業で特定技能として働いていた人材を採用するルートです。送出し機関への手数料や渡航費が不要となります。

候補者がすでに自分で住居を借りている場合は、住居準備費もかかりません。日本の生活や文化に慣れており、初期費用を大幅に抑えつつ即戦力として期待できるルートです。

パターン3:自社の技能実習生から特定技能へ移行する場合(約15万~35万円)

自社で雇用している技能実習生を、特定技能へ切り替えて継続雇用するルートです。人材紹介料や送出し機関費用、渡航費、住居準備費が一切かかりません。

在留資格の変更申請費用と、登録支援機関への初期費用のみで手続きが完了します。すでに自社の業務に精通しているため、教育コストもかからず、最も費用対効果が高い採用手段です。

【建設業特有】JAC年会費や受入負担金などの追加費用

建設分野で特定技能外国人を採用する場合、他業界にはない独自の費用が発生します。国土交通省が管轄する「建設技能人材機構(JAC)」への加入が必須となるためです。

正会員団体の所属有無によって異なりますが、JACの年会費(24万~36万円)や、外国人1人あたりの受入負担金(月額12,500円)が追加で必要となります。建設業の採用担当者はこれらの業界特有コストを必ず予算に組み込んでください。

企業負担?本人負担?法的な線引きと注意点

特定技能制度では、外国人材を保護するために費用の負担区分が厳格に定められています。ルールを誤ると行政処分を受けるリスクがあるため、正確な理解が必要です。

原則として企業が負担しなければならない費用(支援委託費など)

法令で定められた「義務的支援」の実施にかかる費用は、企業が全額負担しなければなりません。事前ガイダンス、生活オリエンテーション、役所への同行、定期面談などが該当します。

これらの支援を登録支援機関へ委託する場合の委託費も、当然企業負担です。外国人の給与から支援委託費を天引きしたり、間接的に負担させたりする行為は法令違反となります。

本人の同意があれば本人負担にできる費用(渡航費・住居費など)

食費、近隣相場と同等の適正な家賃、水道光熱費などは、本人との間で書面による明確な合意があれば、外国人本人の負担とすることが認められています。

入国時の渡航費についても、原則は企業負担とされていますが、本人の同意があれば自己負担とすることも可能です。ただし、送出国との取り決め(MOC)によっては企業負担が絶対条件となる国もあるため、公的機関の最新情報を確認してください。

帰国費用が払えない場合の企業負担義務

特定技能外国人が在留期間を満了して帰国する際、自力で帰国費用(航空券代など)を用意できない場合は、最終的に受け入れ企業が負担する義務を負います。

これは予期せぬ失業や帰国時のトラブルを防ぐための安全網です。採用時の雇用契約書にも帰国費用の負担に関する項目を明記し、有事に備える必要があります。

法律で禁止されている費用の徴収(保証金・違約金)

いかなる理由があっても、外国人本人やその家族から保証金を徴収したり、早期退職に伴う違約金を設定したりすることは法律で固く禁止されています。

失踪を防ぐ目的であっても、金銭的な縛りを設けることは人権侵害とみなされます。違反が発覚した場合、外国人受け入れの停止処分など、企業活動に深刻なダメージを与える行政指導の対象となります。

特定技能採用におけるよくある失敗事例

費用面だけを注視して採用を進めると、入社後のトラブルや早期離職につながります。実務の現場で発生しやすい失敗事例を解説します。

事例1:費用だけで登録支援機関を選んだ

委託費用の安さだけで登録支援機関を選定した結果、入社後の定期面談が実施されず、外国人の生活相談が放置されるケースです。結果的に現場の社員がサポートに追われ、本来の業務が回らなくなりました。支援の質は定着率に直結するため、安価すぎる業者には注意が必要です。

事例2:支援体制を確認せず契約した

初期費用を抑えて契約したものの、病気や事故など緊急時の通訳費用や、役所手続きの同行費用がすべて「オプション」として追加請求された事例です。支援の対応範囲と追加費用の条件を契約前に確認しなかったことで、結果的に予算を大きく超過してしまいました。

事例3:定着支援を軽視した

住居の準備費用を削るために、文化や生活習慣の異なる複数の外国人を狭いアパートに同居させたケースです。騒音トラブルやストレスが原因で人間関係が悪化し、入社後わずか数ヶ月で集団離職が発生しました。生活環境への適切な投資を怠ると、採用費用そのものが無駄になります。

予算を抑える!特定技能の初期費用を削減する4つの戦略

法令を遵守しながら採用コストを適正化し、質の高い人材を確保するための実践的な戦略を4つ紹介します。

1. 助成金・補助金(人材確保等支援助成金など)を積極的に活用する

外国人材の受け入れ環境整備を支援する国の助成金を活用します。「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」などを利用すれば、通訳費やマニュアルの多言語化費用の一部が補填されます。

最大で数十万円の助成金が支給される可能性があります。ただし、機器の購入や就労開始前の事前の計画申請が必要となるため、採用計画と連動して動くことが重要です。

2. 登録支援機関へ委託せず「自社支援(内製化)」に切り替える

企業が一定の要件を満たす場合、登録支援機関へ依頼せず、自社で義務的支援を行う「自社支援」を選択できます。これにより、支援委託費や初期支援費用(10万〜20万円)を削減可能です。

要件には、過去2年以内に中長期在留外国人の受け入れ実績があることや、支援責任者の選任が含まれます。ただし、担当者の業務負担が増加するため、費用対効果と社内リソースを慎重に見極める必要があります。

3. ハローワークやSNSを活用し国内在住者を直接採用する

人材紹介会社を通さず、すでに日本にいる留学生や特定活動の在留資格を持つ外国人を直接採用する手法です。ハローワークの外国人雇用サービスセンターや、特定技能向けの求人媒体、SNSコミュニティを活用します。

高額な人材紹介料や海外からの渡航費を省くことができるため、50万〜100万円規模のコスト削減に繋がります。採用担当者の募集活動における工数は増えますが、金銭的メリットは絶大です。

4. 社宅の活用や中古家電で住居準備費を最適化する

単身用アパートを新規で借り上げるのではなく、既存の社宅や寮を活用して住居準備費を抑えます。複数名での共同生活(ルームシェア)を導入することも、1人あたりの家賃負担を下げる有効な手段です。

また、生活に必要な家具や家電は新品にこだわらず、中古品やリサイクルショップを活用することで初期費用を圧縮できます。清潔で安全な環境さえ担保できれば、費用をかけずに生活基盤を整えることが可能です。

制度選びや外国人採用に不安がある場合は、専門家へ相談することが近道です。海外人材コネクトナビでは、登録支援機関の特徴や対応業種を比較できます。

特定技能の費用に関するよくある質問(FAQ)

特定技能外国人の費用に関して、企業の採用担当者からよく寄せられる疑問をまとめました。

Q1. 技能実習生から特定技能へ移行する場合、人材紹介料はかかりますか?
自社で雇用している技能実習生をそのまま特定技能へ移行させる場合、人材紹介料はかかりません。新たな人材を探すプロセスが発生しないため、在留資格の変更申請費用と支援費用のみで手続きが可能です。

Q2. 登録支援機関への委託費用を外国人の給与から天引きできますか?
給与からの天引きや、その他いかなる方法でも外国人に負担させることは違法です。義務的支援にかかる費用は、すべて企業が負担しなければならないと法令で定められています。

Q3. 渡航費を全額外国人本人に負担させることは可能ですか?
法令上は、本人との合意があれば自己負担とすることが可能です。しかし、送出国との二国間協定(MOC)により企業負担が義務付けられている国もあります。また、採用競争力を高めるために企業が負担するケースが一般的です。

Q4. 費用を安く抑えるために、すべての支援を自社で行うことは可能ですか?
可能です。ただし、過去に外国人労働者を適正に受け入れた実績があることや、母国語での相談窓口を設置できることなど、厳しい要件をクリアする必要があります。要件を満たせない場合は、登録支援機関への委託が必須となります。

外国人採用の費用と体制整備チェックリスト

採用活動を本格化させる前に、以下の項目を確認して抜け漏れを防ぎましょう。そのままコピーして実務にご活用ください。

□ 採用ルートごとの費用相場(国内・海外・移行)を把握しているか
□ 人材紹介料だけでなく、渡航費や住居準備費を見積もりに含めているか
□ 企業負担と本人負担の法的な区分を正しく理解しているか
□ 帰国費用が支払えない場合の企業負担義務を雇用契約書に明記する予定か
□ 支援体制(自社で行うか、登録支援機関へ委託するか)を決定したか
□ 登録支援機関のサポート範囲とオプション追加費用を確認したか
□ 住居環境の整備など、入社後の定着を見据えた予算を確保しているか

まとめ:正確な初期費用の把握で採用を成功に導こう

特定技能外国人の初期費用は、採用ルートや対象者の国籍によって大きく変動します。

海外から新たに採用すれば総額で100万円を超えることも珍しくありませんが、国内在住者の採用や技能実習生からの移行を活用すれば、費用を大幅に圧縮することが可能です。

費用は単なるコストではなく、外国人材の定着と企業の生産性向上のための「先行投資」です。目先の安さだけで支援体制を疎かにすると、早期離職や法令違反による行政処分のリスクを抱えることになります。

外国人採用で失敗しないためには、自社に合った支援体制を整えることが重要です。海外人材コネクトナビ掲載企業を比較し、信頼できる登録支援機関へ相談してください。

執筆者コネクトナビ編集部

外国人材採用に役立つ情報を随時発信しています。


監修青山 信明

2018年から一般社団法人外国人介護留学生支援機構にて、日本で介護職を目指す外国人留学生の生活支援および就職支援を担当。ベトナム・ネパール・インド国籍の学生支援に従事する。
特定技能制度施行後は、同機構が登録支援機関として認可を受ける過程にも関与し、現在は主にベトナム国籍人材を中心とした特定技能外国人の支援業務を行っている。

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