2026.09.09

大阪市東成区でフィリピン人介護人材が活躍するための環境づくり

介護施設で笑顔で働く外国人スタッフと日本人職員の様子

求人を出しても応募が来ない状態が続き、夜勤のシフトが組めなくなってきた。大阪市東成区でそう感じている施設は少なくないはずです。

周辺には特別養護老人ホームやサ高住、グループホームが集まっており、限られた人材を近隣施設同士で奪い合う状況が生じている可能性があります。フィリピン人介護人材の受入れと定着は、日本人の応募だけを待ち続けるか迷う施設にとって、現実的な選択肢のひとつです。

この記事は、東成区で人材の確保・定着に課題を抱える施設の経営者や採用担当の方に向けて書いています。制度の違いから費用相場、登録支援機関の選び方まで、自施設に合う方法を判断できる材料をお届けします。読み終えるころには、自施設が受入れに向いているか、どの支援機関を比較すればよいかまで見えてくるはずです。

この記事のポイント

□ 東成区の高齢化率は令和5年時点で24.9%、令和8年推計で23.7%という結果があります
□ 早く人手が要るなら特定技能、長期育成なら在留資格「介護」を選びます
□ 東成区には2020年時点で在留外国人が7,444人暮らしています
□ 委託の可否は専任担当を置けるかどうかで判断します
□ 東成区近隣に拠点がある支援機関なら、トラブル時の当日訪問が期待できます

大阪市東成区の介護人材不足はどれくらい深刻か?

大阪市東成区役所が公表する「東成区の概要」によると、令和8年1月1日推計人口で65歳以上の割合は23.7%、市内24区中16位です。

同じ資料の令和5年2月1日推計人口では、高齢化率24.9%、人口密度は18,854人/平方キロメートルで市内3位という結果も出ています。時点が異なる別々の調査結果ですが、いずれも高い水準にあり、介護需要を支える担い手の確保が課題となっている地域です。

施設は多いのに人が足りない理由

大阪市が公表する2021年6月1日時点の資料では、東成区内に特別養護老人ホーム4施設、老健3施設、サ高住9施設、グループホーム8施設、有料老人ホーム11施設があります。合計40施設という数は、決して少なくありません。

施設数が多いことから、限られた人材を近隣施設同士で奪い合う構図が生じている可能性があります。求人を出しても、隣接する生野区や城東区の施設と条件を比べられてしまいます。

求人サイトに見る東成区の求人掲載の傾向

民間求人サイトのみんジョブでは、東成区の介護職求人掲載数は105件で大阪市内第14位という結果が示されています。この数字はいつ時点のものかが明記されていない点に留意が必要です。

掲載件数の少なさと応募の集まりにくさとの間に直接の因果関係を示す調査結果はありませんが、関連している可能性はあります。

日本医師会総合政策研究機構の推計では、東成区が含まれる二次医療圏の75歳以上人口は2020年の11,607人から2045年には14,270人へ、23%増加する見込みです。支える側の担い手不足は、今後さらに強まっていく可能性があります。

フィリピン人介護人材が選べる在留資格、東成区の施設にはどちらが合うか?

外国人介護人材を受け入れる在留資格には、主に「特定技能」と在留資格「介護」があります。どちらも介護施設で働けますが、性格が異なります。

特定技能は、比較的短い準備期間で就労を開始できる制度です。在留資格「介護」は、介護福祉士の資格取得を前提とした、長期的な人材育成に向く制度といえます。

比較項目 特定技能 在留資格「介護」
就労開始までの準備期間 比較的短い 資格取得が前提のため長め
業務範囲 介護業務全般 介護業務全般(資格保持者)
在留期間の考え方 更新を重ねて在留 更新に上限がなく長期就労が可能
向いている施設 早期の人員補充が必要な施設 長く育成し定着させたい施設

この表からも分かるとおり、東成区のようにすぐにでも人手が欲しい施設は特定技能から検討することが多くなります。腰を据えて育成したい施設では、在留資格「介護」への移行が検討される場合もあります。

技能実習は本来、技能移転を目的とした制度であり、就労のみを目的とした受入れとは前提が異なります。募集要項や制度の詳細は改正が続いているため、出入国在留管理庁の最新情報で確認することが欠かせません。

自施設に外国人介護人材の受入れが向いているか見極める

受入れ方法を比較する前に、自施設の状況を整理する必要があります。まず確認したいのは、不足している人数と職種です。

夜勤専従なのか、日勤帯の介護職員なのか、不足の中身によって適した在留資格が変わってきます。

受入れに向いている施設の傾向

□ 慢性的な人員不足が半年以上続いている
□ 日本人限定の求人で応募がほぼ来ていない
□ 指導役になれる職員が確保できる
□ 住居の手配にある程度の予算を割ける
□ 経営層が中長期の受入れ方針に前向きである

逆に、既存職員の離職が続いていて現場が落ち着かない施設は、受入れ前に体制を整えるほうが先です。教育担当者を置く余裕がない状態で受け入れると、指導役が孤立してしまいます。

日本語能力の見極めと、任せる業務範囲の設計も、この段階から考えておく必要があります。

受入れが決まってから就労開始までの流れと期間

受入れの流れは、在留資格の申請、住居の確保、支援計画の作成という順で進みます。申請から在留資格が交付されるまでの期間は、時期や個別の状況によって変動します。

正確な審査期間は出入国在留管理庁の公表情報で都度確認することが必要です。余裕を持った準備が欠かせません。

区内および隣接する駅として、今里駅・緑橋駅・深江橋駅・新深江駅があり、大阪メトロの複数路線が利用できます。通勤経路を確保しやすい立地といえます。

住居探しには時間がかかります。不動産情報サイトのスーモが公表する家賃相場では、東成区のワンルームが3万8千円となっています。この水準感を早めに把握し、受入れの初期段階から並行して住居探しを進めることが望まれます。

フィリピン人介護人材の受入れにかかる費用の相場と内訳

フィリピン人介護人材の受入れにかかる費用の相場と内訳

費用は施設によって差がありますが、渡された材料にある水準を押さえておくと見積もりの妥当性を判断しやすくなります。

紹介手数料の水準

全国老人福祉施設協議会の令和5年度調査によれば、常勤介護職員(介護福祉士有り)の紹介手数料は平均約89万円とされています。この数字は東成区固有のものではなく、全国調査の結果です。

同じ調査では、430施設のうち142施設で手数料が100万円を超えており、突出した事例として最高220万円という数字も示されています。

一方、全国介護事業者連盟が2021年に実施した調査では、中途採用の紹介単価は1人あたり49万5,227円という結果も出ています。調査時期や対象によって数字に開きがあることが分かります。

調査 対象 紹介手数料の水準
全国老人福祉施設協議会(令和5年度) 常勤介護福祉士920人(全国) 平均約89万円、突出例で最高220万円
全国介護事業者連盟(2021年) 中途採用359法人対象(全国) 平均49万5,227円

いずれも全国調査の結果であり、東成区に固有の相場を示すものではありません。この差は、紹介会社や採用条件によって手数料の設定が大きく異なることを示しています。

東成区単独の相場を示す公表資料は見当たりません。見積もりを複数社から取り、内訳をそろえて比べることが欠かせません。

支援委託費など別途かかる費用

紹介手数料に加えて、登録支援機関へ委託する場合は支援委託費、住居準備費、日本語教育費が別途かかります。

それぞれの内訳を、契約前に書面で確認しておく必要があります。

フィリピン人介護人材の支援を自社で行うか登録支援機関へ委託するか

フィリピン人介護人材の支援を自社で行うか登録支援機関へ委託するか

特定技能で受け入れる場合、支援計画の実施を自社で行うか、登録支援機関へ委託するかを選べます。専任の担当者を置ける施設は、自社対応でコストを抑えられる場合があります。

一方、担当者を専任で配置できない施設は、委託を検討することになります。

比較項目 自社で支援を行う 登録支援機関へ委託する
初期コスト 低くなりやすい 委託費が別途かかる
必要な体制 専任担当者が必要 担当者の専任配置は不要
生活支援の質 施設の力量に依存する ノウハウの蓄積がある
緊急時対応 施設が直接対応する 支援機関が窓口になる

東成区のように施設数が多い地域では、担当者一人あたりの業務量が増える可能性も考えられます。委託によって現場の負担を分散させる選択肢が現実的になります。

登録支援機関を選ぶときの判断基準とは?

委託すると決めた後に迷うのが、どの登録支援機関を選ぶかという点です。判断基準は複数ありますが、次の観点を押さえておくと比較しやすくなります。

東成区やその近隣に拠点があるかどうか

支援機関が東成区やその近隣に拠点を持っているかは、実務上の差になります。トラブルは電話やメールだけでは解決しないことがあります。

近隣に担当者がいれば、当日中に施設へ来てもらえる可能性が高まります。人材本人の役所手続きや住居、通院の同行も、対面のほうが進みやすいものです。

地域の不動産会社や日本語教室とのつながりを持つ支援機関であれば、住居探しや生活支援がスムーズになります。逆に遠方の事業者は訪問頻度が下がりやすく、交通費が費用に上乗せされることもあります。

実績と対応範囲の確認

介護分野に特化した実績があるか、特定技能と技能実習の両方に対応できるかも確認したい点です。対応できる国籍と現地の送り出し機関との連携体制も、事前に聞いておく必要があります。

費用体系が明確で、追加費用が発生する条件をあらかじめ提示してくれるかどうかも、あわせて確認しておきましょう。

見積もりを取るときに確認すべき6項目

複数の登録支援機関から見積もりを取る際は、項目をそろえて比較することが欠かせません。

□ 紹介手数料と支援委託費が分かれて記載されているか
□ 通訳対応の範囲と追加費用の条件
□ 緊急時訪問にかかる費用の有無
□ 契約解除やキャンセル時の条件
□ 定着支援の具体的な内容と頻度
□ 担当者が東成区やその近隣に常駐しているか

項目がそろっていない見積もりは、後から想定外の費用が出てくる原因になります。契約前に必ず書面で確認してください。

悪質な事業者を見分けるにはどうすればよいか?

良い基準が分かると、その裏返しとして避けるべき事業者の特徴も見えてきます。

見積もりの内訳を口頭でしか説明しない事業者は、注意が必要です。契約解除の条件を明示しない、担当者の名前や連絡先が曖昧といった事業者も避けたほうがよいでしょう。

「必ず定着します」といった断定的な説明をする事業者にも注意が必要です。定着は施設と支援機関の双方の努力で作られるものであり、保証できるものではありません。

外国人介護人材の受入れ体制として何を準備すればよいか?

外国人介護人材の受入れ体制として何を準備すればよいか

受入れ前に準備すべきことは、住居、シフト、指導役、記録の4点に整理できます。

日本語での指示が十分に伝わらない期間を見込み、シフトには余裕を持たせておく必要があります。指導役を一人に集中させず、複数人で分担できる体制も欠かせません。

住居の確保

スーモが公表する家賃相場では、東成区のワンルームが3万8千円、1K・1DKが6.0万円です。駅から徒歩1〜5分の新築物件では6.2万円からという水準も示されています。

大阪府内では、住宅確保要配慮者居住支援法人の制度が運用されており、令和8年1月31日時点で210法人が指定を受けています。これは大阪府全体の制度であり、東成区単独の窓口ではありませんが、外国人の入居を含めた相談ができる先として活用を検討する価値があります。

記録の書き方と職員への説明

支援計画の実施状況は、記録として残す義務があります。日本語での記録作成に不安がある場合は、テンプレートを事前に用意しておくと負担が減ります。

受入れの目的や役割分担を、既存職員へ事前に説明しておくことも欠かせません。説明が不足すると、指導役だけが負担を抱え込む状況につながります。

受入れ後に起きやすいトラブルと対処法

受入れ後によく起きるのが、生活面での孤立から生じる不調です。役所での手続きや病院の受診が一人でできず、負担が積み重なっていきます。

2020年12月31日時点のデータでは、東成区には在留外国人が7,444人暮らしており、大阪市24区中7番目に多い水準とされています。生野区に隣接し、韓国・朝鮮籍に加え中国籍やベトナム籍の住民も多く暮らす地域とされており、既存のコミュニティがあることは孤立を防ぐ土台になる可能性があります。

ただし、コミュニティがあることと、施設側が生活支援を怠ってよいことは別の話です。役所手続きや通院への同行は、施設か支援機関のどちらかが責任を持って対応する必要があります。

フィリピン人介護人材を東成区で定着させるための取り組み

定着のために最も効くのは、生活面の孤立を防ぐことです。買い物や役所手続きへの同行は、地味に見えて効果の大きい取り組みです。

東成区には大成小学校生涯学習ルームが運営する日本語交流教室があり、今里駅から徒歩圏内にあります。介護職員向けに特化した教室ではありませんが、地域の日本語学習の場のひとつとして参考程度に案内できます。

大阪府の制度として「令和8年度介護分野への就労・定着支援事業」があり、介護職員初任者研修や実務者研修を修了した場合に研修受講料の一部を補助する仕組みがあります。この事業は外国人介護人材も対象に含まれています。

大阪市も「介護人材確保・職場環境改善等事業」を令和7年度に実施しており、東成区の施設もこうした制度の活用を検討できます。

海外人材コネクトナビでは、対応制度や支援内容から支援機関を比較できます。定着支援の実績を確認しながら、自施設に合う機関を探してみてください。

フィリピン人介護人材の受入れの失敗事例から学ぶ

契約後に通訳対応の追加費用が発生するのは、受入れで最も多い想定外の出費です。契約前に通訳対応の範囲と料金を書面で確認しておけば、防げるケースがほとんどです。

住居探しの開始が遅れると、入職時期が1か月単位でずれることがあります。在留資格の手続きと並行して、早い段階から物件探しを始めておくことが対策になります。

既存職員への説明が不足したまま受入れを進めると、指導役が孤立してしまいます。受入れの目的と役割分担を事前に共有しておくことで防げます。

日本語能力の見極めが不十分なまま高度な業務を任せると、早期離職につながりやすくなります。任せる業務の範囲を、能力に合わせて段階的に広げていく設計が有効です。

費用の安さだけで支援機関を選ぶと、受入れ後の支援がほとんど無いという事態も起こり得ます。費用だけでなく、定着支援の具体的な内容まで確認して選ぶことが欠かせません。

受入れ準備チェックリスト

□ 自施設の人員体制と不足数を把握した
□ 受入れ可能な在留資格を確認した
□ 住居の確保の見通しを立てた
□ 指導役とシフトの調整方針を決めた
□ 費用の総額と内訳を確認した
□ 支援機関の対応範囲と拠点の場所を確認した
□ 既存職員への説明の場を設けた
□ 定着支援の内容と補助制度の活用を確認した

東成区でフィリピン人介護人材の定着を進めるためのまとめ

東成区の高齢化率は令和5年時点で24.9%、令和8年推計で23.7%という結果が示されています。75歳以上人口は2045年にかけて23%増加すると見込まれており、介護人材の不足は一時的なものではありません。

特定技能と在留資格「介護」のどちらを選ぶかは、自施設が早期の人員補充を求めているか、長期育成を目指しているかで判断が変わります。

費用は全国調査で紹介手数料の平均が約89万円とされており、支援委託費や住居費が別途かかることも押さえておく必要があります。

支援を自社で行うか委託するかは、専任担当者を置けるかどうかで判断します。委託する場合は、東成区やその近隣に拠点を持つ支援機関を優先的に検討する価値があります。

定着のためには、生活面の孤立を防ぐ同行支援や、日本語学習の環境づくりが欠かせません。海外人材コネクトナビ掲載の支援機関を比較し、自施設に合った受入れ方法を見つけてください。

よくある質問

フィリピン人介護人材を受け入れる場合、費用はどれくらいかかりますか?
全国老人福祉施設協議会の令和5年度調査では、紹介手数料の平均が約89万円という結果が出ています。これに支援委託費や住居準備費が加わります。全国調査の数字のため、複数社から見積もりを取って比較することをおすすめします。
東成区で住居はスムーズに見つかりますか?
スーモが公表する家賃相場では、東成区のワンルームは3.8万円という調査結果があります。駅周辺には物件が多くありますが、早めに探し始めることが入職時期を守るポイントになります。
特定技能と在留資格「介護」、どちらを選べばよいですか?
早く人手を確保したいなら特定技能、長期的に育成したいなら在留資格「介護」が向いています。受入れ人数と教育体制で判断するとよいでしょう。
支援機関に委託せず自社で対応することはできますか?
可能ですが、専任の担当者を置ける体制が前提になります。専任配置が難しい場合は、登録支援機関への委託を検討してください。
受入れ人数が多く、自施設だけでは支援が追いつかない場合はどうすればよいですか?
東成区やその近隣に拠点を持つ登録支援機関へ相談することをおすすめします。当日訪問や生活支援の同行が期待でき、負担を分散できます。