2026.06.23

特定技能の支援計画書とは?義務的支援10項目の書き方と不備を防ぐポイント

特定技能外国人の受け入れ手続きを進める中で、「支援計画書をどのように書けばいいのか分からない」「不備があって申請が通らなかったらどうしよう」と不安を抱える担当者の方は多いのではないでしょうか。

特定技能制度では、外国人材が日本で安心して働き、生活できるようにするためのサポート体制を整えることが法律で義務付けられています。出入国在留管理庁へ提出する支援計画書は、このサポートを「誰が・いつ・どうやって」行うのかを証明する非常に重要な書類です。

記載に曖昧な点や不備があれば申請は差し戻され、採用計画が大きく遅れてしまうリスクがあります。

自社で支援を行うべきか、外部の専門機関に任せるべきかを含めて、どのような対応が必要なのかを分かりやすくお伝えします。

この記事のポイント

  • 特定技能の受け入れには「義務的支援10項目」の確実な実施が必須となる
  • 支援計画書には抽象的な表現を避け、「誰が・どうやって」を具体的に記載する必要がある
  • 2025年4月の制度変更により、一部の届出ルールや面談のオンライン化が新設された
  • 自社支援はコストを抑えられるが、担当者の要件や多言語対応のハードルが高い
  • 登録支援機関へ委託するかどうかは、費用と社内リソースを比較して判断することが重要である

特定技能の「義務的支援」と「支援計画」とは?基礎知識を解説

外国人材を受け入れるにあたり、まずは支援制度の全体像を正しく把握しておくことが大切です。ここでは基本的なルールと用語の意味を整理します。

支援計画作成の法的根拠と誰が作成するのか

特定技能1号の外国人材を受け入れる企業(受入れ機関)は、出入国管理及び難民認定法に基づき、外国人材が仕事や日本での生活にスムーズに適応できるよう支援を行う義務があります。この支援内容をまとめたものが「1号特定技能外国人支援計画」です。

計画の作成と実施は、原則として受入れ企業自身が責任を持って行わなければなりません。しかし、社内に外国語で対応できるスタッフがいない場合や、初めての受け入れでノウハウがない場合は、国の認定を受けた「登録支援機関」に業務の全部または一部を委託することが認められています。

「義務的支援」と「任意的支援」の違い

外国人材へのサポートには、法律で実施が必須となっている「義務的支援」と、企業が独自にプラスアルファで行う「任意的支援」の2種類が存在します。

結論からお伝えすると、まずは義務的支援を確実にクリアすることが最優先です。そのうえで、定着率を高めるために自社に合った任意的支援を取り入れるのが成功のポイントとなります。

比較項目 義務的支援 任意的支援
法的な位置づけ 必ず実施しなければならない(必須要件) 企業の裁量で実施する(任意要件)
主な目的 日本での生活基盤の確立、トラブルの未然防止 従業員満足度の向上、長期的な定着の促進
具体的な内容例 入国前のガイダンス、住居確保、生活オリエンテーションなど 日本語学習費用の全額補助、家族呼び寄せのサポート、資格取得支援など

義務的支援は法令で定められた最低限のベースラインです。一方の任意的支援は、外国人材のモチベーションを高め、長く自社で活躍してもらうための投資として多くの企業が導入しています。

受入れ機関が実施する「義務的支援10項目」の具体的内容

法律で定められている義務的支援は、全部で10項目あります。それぞれどのようなサポートが必要なのかを具体的に確認していきましょう。

1. 事前ガイダンスの提供

雇用契約を結んだ後、外国人材が日本へ入国する前に、労働条件や日本での生活に関する事前ガイダンスを行います。業務内容や給与、労働時間はもちろん、母国のあっせん機関から不当な保証金を徴収されていないかの確認も必要です。
対面、またはお互いの顔が見えるテレビ電話などを使用し、外国人材が理解できる言語で3時間以上実施することが求められます。

2. 出入国する際の送迎

慣れない土地での移動は、外国人材にとって大きな負担となります。そのため、入国時は到着した空港や港から就労先の事業所または住居まで送迎しなければなりません。
帰国する際も、保安検査場の入り口まで見送る義務があります。なお、この送迎にかかる交通費はすべて受入れ企業が負担し、外国人材に請求してはいけません。

3. 住居確保・生活に必要な契約支援

外国人材が日本で生活するための住居を確保するサポートです。企業が社宅や寮を提供するケースと、賃貸アパートを借りる手伝いをするケースがあります。居室の広さは1人あたり7.5㎡以上を確保するルールが定められています。
また、賃貸契約だけでなく、銀行口座の開設、携帯電話の契約、電気・ガス・水道といったライフラインの手続きにも同行し、必要に応じてサポートを行います。

4. 生活オリエンテーションの実施

入国後できるだけ早い段階で、日本で生活するためのルールやマナーを教えるオリエンテーションを実施します。ゴミの出し方や交通ルール、地震など災害時の対応、医療機関の利用方法などが対象です。
実施時間は新規入国者の場合で8時間以上、技能実習から移行する人材でも4時間以上と決められており、記録をしっかりと残す必要があります。

5. 公的手続等への同行

住民登録やマイナンバーカードの申請、国民健康保険への加入など、役所での行政手続きを支援します。日本の公的な書類は日本語が難しく、専門用語も多いため、担当者が同行して書類の書き方を教えたり、代わりに記入したりするサポートが求められます。

6. 日本語学習の機会の提供

職場でのコミュニケーションや地域社会への適応を促すため、日本語を学ぶ機会を提供します。地域の日本語教室の情報を案内したり、自主学習用の教材を紹介したりするのが一般的です。
学習にかかる費用を企業が負担するかどうかは任意ですが、学習環境を整えること自体は義務となっています。

7. 相談・苦情への対応

仕事の悩みや日常生活でのトラブル、ハラスメントなどについて、外国人材が母国語で相談できる窓口を設置しなければなりません。
相談窓口は、平日週3日以上、かつ休日も週1日以上対応できる体制を整える必要があります。相談内容によっては、労働基準監督署などの専門機関へ案内し、解決に向けたサポートを行います。

8. 日本人との交流促進

外国人材が地域社会で孤立しないよう、日本人と交流する機会を作ります。地域のお祭りや自治会のイベントへの参加を案内するほか、社内で歓迎会や懇親会を企画することも有効です。言葉や文化の壁を越えて、周囲との関係性を築けるよう後押しします。

9. 転職支援(人員整理等の場合)

経営悪化による人員整理など、企業側の都合で雇用契約を解除せざるを得ない場合、外国人材が次の就職先を見つけられるよう支援する義務があります。
ハローワークへの同行や求人情報の提供、就職活動のための有給休暇の付与などを行い、在留資格を失うリスクを最小限に抑えます。

10. 定期的な面談・行政機関への通報

支援責任者が、外国人材本人およびその直属の上司と、3か月に1回以上のペースで定期面談を実施します。生活状況や健康状態、労働環境に問題がないかを確認することが目的です。
もし、賃金不払いや長時間労働といった労働関係法令の違反、または不法就労の疑いを発見した場合は、速やかに関係行政機関へ通報する義務があります。

不備を防ぐ!特定技能の支援計画書の書き方

義務的支援の内容を理解したところで、実際に支援計画書を作成する際の手順と、審査をスムーズに通過するためのポイントをお伝えします。

作成手順と記載すべき必須項目

支援計画書は、出入国在留管理庁が指定する参考様式(第1-17号)を使用します。受入れ企業や外国人材の基本情報に加え、先ほど解説した義務的支援10項目について、「誰が・いつ・どこで・どのように」実施するのかを具体的に記載しなければなりません。

例えば、相談窓口の項目であれば、「対応する言語」「担当者の氏名」「電話番号やメールアドレス」「対応可能な曜日と時間帯」を漏れなく記入します。

また、社内で支援を行う場合、支援の担当者は「外国人材の直属の上司や同僚とは異なる部署の人間」を選任する必要があります。これは、評価権を持つ上司に対しては、外国人材が本音で悩みを相談しにくいためです。

審査で指摘されやすいNG例・よくある不備

支援計画書の審査は非常に厳格です。よくある不備や失敗事例を知り、同じミスを防ぎましょう。

最も多いNG例は、実施方法の記載が曖昧なケースです。「必要に応じて適切に支援する」といった言葉は具体性に欠けるため、差し戻しの対象になります。「〇〇課の△△が同行して手続きを行う」のように、行動レベルで書き込んでください。

また、母国語対応の体制が不十分な場合も不許可の原因になります。「翻訳アプリを使用する」だけでは認められないケースが多いため、通訳者の手配や外部サービスの利用を明確にしておく必要があります。

よくある失敗事例
・送迎費用や住居の初期費用など、本来企業が負担すべき義務的支援の費用を外国人材の給与から天引きする計画になっていた
・支援担当者を現場の工場長(直属の上司)に設定してしまい、要件を満たさず差し戻された
・古い様式をダウンロードして作成してしまい、最初から書き直しになった

【2025年4月施行】支援計画に関する最新の制度変更と罰則リスク

特定技能制度は運用ルールの見直しが定期的に行われています。2025年4月からは、企業の負担軽減と適正な運用を目指して、いくつかの重要な変更が施行されました。

一つ目は、定期届出の頻度の変更です。これまで四半期ごとに提出していた支援実施状況の届出が、年1回(4月〜5月)にまとめられました。
二つ目は、定期面談のオンライン化です。これまで対面が原則だった3か月に1回の面談が、外国人材本人の同意があり、お互いの顔が見えるツールを使えばオンラインでも実施可能になりました。

一方で、ルール違反に対する監視は厳しくなっています。支援計画通りにサポートを行わなかった場合や、虚偽の報告をした場合は、出入国在留管理庁から改善命令が出されます。これに従わないと、最悪の場合「今後5年間にわたり新たな外国人材の受け入れが禁止される」という非常に重いペナルティが課せられます。法令遵守は絶対に欠かせません。

支援業務は自社で行うべき?登録支援機関への委託との比較

支援計画の作成や実際のサポート業務は、自社で内製化することも、登録支援機関という専門のプロフェッショナルに委託することも可能です。結論として、社内に外国人材のサポート経験がある専門部署や、多言語対応の体制が整っていない場合は、登録支援機関への委託をおすすめします。

比較項目 自社で支援を行う(内製) 登録支援機関へ委託する
費用相場 無料(社内の人件費や実費のみ) 初期費用:10万〜20万円
月額費用:2万〜3万円/人
メリット 外部へのランニングコストを抑えられる
外国人材と直接関わるため関係性が深まる
複雑な書類作成や法務リスクを減らせる
休日夜間対応など社内の業務負担を大幅に削減できる
デメリット 支援責任者の要件(過去2年以内の相談業務経験など)のハードルが高い
多言語でのトラブル対応に手間がかかる
毎月の委託費用が継続的に発生する
支援機関によってサービスの質にばらつきがある

自社で行えばコストは抑えられますが、日常業務と並行して生活トラブルの対応や行政手続きの同行を行うのは、人事担当者にとって想像以上の負担になります。費用対効果を考慮し、自社に最適な方法を選んでください。

費用や支援内容を比較し、自社に合ったパートナーを探したいとお考えの場合は、海外人材コネクトナビ掲載企業を比較してみてください。強みや対応言語が異なる支援機関の情報を分かりやすく整理しています。

特定技能採用を成功させるためのチェックリスト

外国人採用をスムーズに進め、定着させるための判断基準として、以下の項目をチェックしてみましょう。

□ なぜ外国人材を採用するのか、任せたい業務内容が明確になっている
□ 義務的支援にかかる予算(委託費用、送迎費、住居の初期費用など)を把握している
□ 自社で支援を行う場合、支援責任者や担当者の厳しい要件を満たせるか確認している
□ 日常のコミュニケーションだけでなく、母国語で深い悩みを聞き出せる体制がある
□ 登録支援機関を利用する場合、複数社から見積もりを取り比較検討している

よくある質問

特定技能の支援に関する、担当者からよく寄せられる疑問をまとめました。

Q. 義務的支援にかかる費用は誰が負担しますか?
A. 義務的支援の実施にかかる費用(送迎費、通訳費、面談の交通費など)は、すべて受入れ企業が負担しなければなりません。外国人材本人に負担させることは法律で固く禁じられています。

Q. 登録支援機関には必ず委託しなければならないのでしょうか?
A. 必ず委託しなければならないわけではありません。受入れ企業が「過去2年以内に中長期在留者の生活相談に乗った経験がある」などの支援責任者の要件を満たし、かつ母国語で対応できる体制があれば、すべて自社で行うことが可能です。

Q. 支援計画の内容を変更したい場合はどうすればいいですか?
A. 支援責任者の交代や、委託する登録支援機関の変更など、支援計画の重要な部分に変更があった場合は、変更が生じた日から14日以内に出入国在留管理庁へ変更の届出を行う必要があります。

まとめ

外国人採用で失敗しないためには、制度の仕組みや義務的支援の重みを正しく理解したうえで、自社に合った採用方法や支援体制を選ぶことが重要です。支援計画書は単なる事務手続きではなく、外国人材が安心して能力を発揮するための約束の証と言えます。

社内のリソースだけで対応することが難しいと感じた場合は、無理をせずに外部の専門家を頼ることが、結果的に法令違反のリスクを防ぎ、採用を成功に導きます。海外人材コネクトナビ掲載企業を比較し、自社に最適なパートナーへ相談してください。

執筆者コネクトナビ編集部

外国人材採用に役立つ情報を随時発信しています。


監修青山 信明

2018年から一般社団法人外国人介護留学生支援機構にて、日本で介護職を目指す外国人留学生の生活支援および就職支援を担当。ベトナム・ネパール・インド国籍の学生支援に従事する。
特定技能制度施行後は、同機構が登録支援機関として認可を受ける過程にも関与し、現在は主にベトナム国籍人材を中心とした特定技能外国人の支援業務を行っている。

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