2026.06.21

【完全版】特定技能の「自社支援」切り替えマニュアル|要件・手続きとコスト削減の成功法

特定技能外国人を雇用し、現在は外部の登録支援機関へ毎月の支援業務を委託している企業のなかには、自社での支援体制構築を検討し始めているケースが多いのではないでしょうか。
毎月の委託コストを最適化しつつ、自社の実情に合った手厚いサポートを提供できれば、外国人材の職場への定着率はさらに向上します。

読者の皆様が抱える「委託費用を削減したいが、手続きの負担や法令違反のリスクが不安」という疑問に寄り添い、切り替えの可否から具体的な手順、失敗を防ぐリスク管理までを網羅的に整理します。外部委託から内製化へとスムーズに移行し、強固な受け入れ体制を築くための明確な道筋を描けるようになります。

この記事のポイント

  • 登録支援機関委託と自社支援の制度の違いや費用相場がわかる
  • 自社支援に切り替えるための厳しい企業要件・人員要件を把握できる
  • 手続きの全体的な流れと入管へ提出する必須書類がわかる
  • 切り替え時の失敗事例と、それを防ぐためのリスク管理方法がわかる
  • 自社に適した支援方法を選ぶための判断基準が手に入る

特定技能の「自社支援」とは?登録支援機関から切り替える戦略的意義

結論からお伝えすると、特定技能外国人に対する支援業務は、外部の専門機関に頼らず自社内で直接実施する「自社支援(企業単独型)」への切り替えが可能です。

制度が始まった当初は、専門知識の不足や対応の手間を懸念し、登録支援機関へ業務を委託する企業が主流でした。しかし、外国人材の受け入れノウハウが社内に蓄積されるにつれ、毎月のコスト削減や自社主導のマネジメントを目指して自社支援へ移行する動きが広がっています。

単なる経費削減にとどまらず、外国人材を自社の重要な戦力として長期的に育成するための戦略的な選択肢として注目を集めています。

比較項目 登録支援機関への委託(外部委託型) 自社支援(企業単独型)
毎月の費用相場 外国人1名につき月額2〜3万円 無料(社内の人件費のみ)
制度の特徴 専門的な知識を持つ外部のプロに義務的支援を任せられる 自社の社員が支援責任者・担当者となり、直接サポートを行う
メリット 社内の業務負担が少なく、入管法などの専門知識が不要 大幅なコスト削減と、外国人材との強い信頼関係構築が可能
デメリット 人数に比例して毎月のランニングコストがかかり続ける 社内のリソース確保と、多言語対応を含めた体制整備が必要

支援のプロに任せる安心感がある一方で、委託人数の増加に伴いランニングコストは膨らみます。自社支援へ切り替えることでコストを圧縮できますが、その分だけ社内の業務負担が増えるため、両者の違いを比較しながら自社に適した運用方法を見極める必要があります。

自社支援に切り替える最大のメリットは「コスト削減」と「定着率向上」

自社支援へ切り替える最も大きな動機は、委託費用の削減です。登録支援機関への委託費用は、一般的に外国人1名あたり月額2万円から3万円が相場となります。
仮に10名の特定技能外国人を雇用している場合、毎月20万〜30万円、年間で約240万〜360万円ものランニングコストが発生します。自社支援に移行すればこの外部への支払いが不要となり、浮いた資金を外国人材の待遇改善や社内の設備投資へ回すことが可能です。

また、企業が直接サポートを行うことで、外国人材との間に密接なコミュニケーションが生まれ、強固な信頼関係を築ける点も大きなメリットに挙げられます。生活上の悩みや職場での小さなトラブルに自社社員が迅速に対応できれば、外国人材は安心して働くことができ、結果として離職率の低下と定着率の向上につながります。日々の関わりを通じて、多文化共生や外国人マネジメントのノウハウが社内に蓄積されていくことも、将来的な組織力強化に貢献します。

自社支援のデメリットと想定されるリスク(業務負担・専門知識の壁)

魅力的なメリットがある反面、社内の業務負担が増加するデメリットも直視しなければなりません。法令で定められた10項目の義務的支援をすべて自力でこなす必要があり、担当する社員には相応の時間と労力が求められます。
入管法や労働関係法令は頻繁に改正されるため、常に最新の専門知識をキャッチアップし、適法な運用を続ける体制づくりが不可欠です。

よくある失敗事例:支援体制不足で早期離職した
費用を削減したいという理由だけで十分な準備を行わずに自社支援へ切り替えた結果、担当社員の通常業務が圧迫され、支援がおろそかになってしまったケースがあります。母国語での相談窓口が機能せず、孤独を感じた外国人材が数ヶ月で離職してしまい、かえって採用コストが高くついてしまう事態に陥りました。

切り替えを検討する際は、「社内に外国人材へ分かりやすく対応できる体制があるか」「事務担当に入管業務をこなせる余力があるか」を重要な判断基準として設けるべきです。

自社支援に切り替えるために企業が満たすべき厳しい「要件」

自社支援は、希望すればどの企業でも無条件で実施できるわけではありません。外国人材の人権を守り、適正な労働環境を確保するため、国は受入れ企業に対して非常に厳格な基準を設けています。

外部委託から切り替えるためには、企業全体としての実績と、実際に支援業務を担う個人の要件を両方ともクリアしなければなりません。自社が切り替えの対象となるか、まずは以下の条件と照らし合わせて確認を進めてください。

過去2年間の外国人雇用・管理実績などの「企業側の要件」

企業が自社支援を行うための大前提として、「過去2年以内に、中長期在留資格を持つ外国人の雇用や管理を適正に行った実績」が求められます。技能実習生や、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ人材をトラブルなく受け入れてきた経験が必要です。そのため、外国人の受け入れが初めての企業は、原則として最初から自社支援を行うことはできません。

また、「外国人が十分に理解できる言語での支援体制」を確保することも必須の要件です。多くの場合、外国人材の母国語での対応が求められます。社内に通訳ができるスタッフを配置するか、外部の専門通訳サービスと契約を結び、生活相談やトラブル発生時に円滑なコミュニケーションが取れる環境を整えておく必要があります。

誰を任命すべき?「支援責任者」と「支援担当者」の要件と人選ポイント

実際に支援業務を遂行する中核となるのが「支援責任者」と「支援担当者」です。これらの役職に任命される人物は、過去2年以内に中長期在留外国人の生活相談などの支援業務を経験している必要があります。

人選において最も注意すべきポイントは「中立性の確保」です。支援責任者や担当者は、特定技能外国人に対して直接的な業務指示や指揮命令を行う立場であってはなりません。例えば、製造現場で働く外国人材の直属のライン長や工場長を支援担当者に任命することは、公平な相談体制が築けないと判断され、要件を満たしません。
人事・労務部門の担当者や総務部のスタッフなど、現場の指揮系統から独立した立場の社員を配置するのが正しい人選のあり方です。

海外人材コネクトナビでは、外国人採用を支援する企業や登録支援機関を比較できます。自社支援の要件を満たすのが難しいと感じた場合は、一部の業務を信頼できるパートナーへ委託することも有効な選択肢です。

【ステップ別】登録支援機関から自社支援への切り替え手順と必要書類

要件を満たしていることが確認できたら、実際の切り替え手続きへ進みます。手続きが複雑そうだと不安に感じる方もいらっしゃいますが、全体の流れと準備すべき書類を事前に把握しておけば、手戻りなくスムーズに移行することが可能です。

手続きの漏れは不法就労などの重大なトラブルを招く恐れがあるため、一つひとつのステップを慎重に進めることが求められます。

切り替えの全体フロー(委託解除から入管への届出まで)

切り替えは以下の順序で進めていきます。

まず、現在委託している登録支援機関に対し、自社支援へ移行する旨を伝え、委託契約の解除日を調整します。支援の空白期間が生じないよう、契約終了日の翌日から自社支援が開始されるようにスケジュールを組むことが重要です。

次に、雇用している特定技能外国人本人へ、支援体制が自社に切り替わること、今後の相談窓口の連絡先などを母国語で丁寧に説明し、理解と同意を得ます。
その後、出入国在留管理庁へ提出する書類一式を作成し、契約解除日から所定の期日までに管轄の官署へ届出を行います。受理されて初めて、正式に自社での支援運用がスタートします。

出入国在留管理庁へ提出する必須書類一覧と書き方のコツ

出入国在留管理庁へは、複数の指定様式を提出しなければなりません。主な必須書類は以下の通りです。

  • 支援計画の変更に係る届出書(参考様式第3-2号):委託先を変更し、自社支援へ切り替える旨を申告します。
  • 新しい支援計画書(参考様式第1-17号):自社で実施する支援内容、予定日、提供方法などを詳細に記載します。
  • 支援委託契約に係る届出(参考様式第3-3-2号):登録支援機関との契約が終了した事実を報告します。
  • 特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11-1号):支援体制や人員の要件を満たしていることを証明します。
  • 受け入れ企業の組織図:支援責任者と担当者が、外国人材に対して中立的な立場であることを視覚的に示します(自由形式)。

書類作成のコツは、新しい支援計画書において、各支援項目の実施方法を「いつ・誰が・どのように」行うのか、具体性を持って記載することです。また、組織図では指揮命令系統を明確にし、入管の審査官が一目で中立性を確認できるように工夫することが差し戻しを防ぐポイントになります。

届出の期限(14日以内)と提出先・提出方法(オンライン・郵送など)

届出の提出には「登録支援機関との委託契約を終了した日から14日以内」という厳格な期限が設けられています。この随時届出の期限を過ぎてしまうと、理由書の提出を求められるなど手続きが煩雑になるため、スケジュール管理の徹底が必要です。

提出先は、企業の本店所在地を管轄する地方出入国在留管理官署となります。提出方法は、窓口への直接持参、簡易書留など追跡可能な方法での郵送、またはインターネット経由での「電子届出システム」の利用から選択できます。オンライン申請は24時間対応しており利便性が高いため、事前にシステム利用の準備を整えておくことをおすすめします。

切り替え後に失敗しないための注意点とリスク管理

無事に自社支援への切り替えが完了しても、そこがゴールではありません。企業として自立した支援運用を継続していくためのスタートラインに立った状態だと言えます。

切り替え後に体制が形骸化し、入管法違反などの深刻なトラブルに発展するケースも少なくありません。適正な運用を続けるためのリスク管理のポイントを解説します。

10項目の義務的支援の実施と「支援実施記録の長期保存」

特定技能制度において、企業は事前ガイダンスや出入国時の送迎、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供など、法令で定められた「10項目の義務的支援」を確実に実行しなければなりません。

さらに重要なのが、これらの支援を実施した証拠として「支援状況に関する記録」を正確に作成することです。面談の記録や生活相談の内容を管理簿にまとめ、雇用契約の終了日から1年以上(実務上は監査に備えて5年間保存することが推奨される場合もあります)の長期にわたって適切に保管する義務があります。口頭でのサポートだけでは支援を行った証明にならないため、日々の記録業務をルーティン化する仕組みづくりが求められます。

法令違反や支援漏れによる「受け入れ停止」を防ぐ対策

支援計画の実施漏れや、定期・随時届出の提出遅延、労働法令の違反が発覚した場合、出入国在留管理庁から改善指導を受けるだけでなく、最悪の場合は「特定技能人材の受け入れ停止」という極めて重いペナルティが科されるリスクがあります。

このような事態を防ぐため、業務の属人化を避け、社内でダブルチェックができる体制を整えることが大切です。以下のチェックリストを活用し、自社の準備状況を定期的に見直してください。

自社支援切り替えに向けた準備チェックリスト

  • □ 採用・切り替えの目的が社内で明確になっている
  • □ 自社支援に必要な人員(支援責任者・担当者)を要件通りに整理している
  • □ 現在の委託費用と自社対応時の人件費・コストを把握し比較している
  • □ 外国人が理解できる言語(母国語)での相談対応体制を準備している
  • □ 支援記録の作成と長期保存のルールを社内で共有している

自社支援の負担を減らす!「外部専門家」と「DXツール」の賢い活用法

自社支援へ移行することで社内の業務負担が増えるのは避けられませんが、すべての業務を自社の社員だけで抱え込む必要はありません。

質の高いサポートを維持しながら、担当者の負担を最小限に抑えるためには、外部のリソースや最新のテクノロジーを効果的に組み合わせて活用する視点が重要になります。

行政書士等の専門家への一部委託と自社業務の切り分け

業務効率化の有効な手段として、専門性の高い手続きを外部へ切り出す方法があります。例えば、入管法に精通した行政書士などの専門家に在留資格の更新申請や複雑な届出書類の作成のみをスポットで依頼し、日々の生活相談や職場でのコミュニケーションといった人的な支援は自社で行うといった賢い切り分けが可能です。

また、近年では外国人マネジメントに特化したDX支援ツール(管理システム)の導入も進んでいます。ツールを活用することで、多言語での連絡事項の一斉配信や、支援記録の自動フォーマット化、在留期限のアラート管理などが容易になり、事務作業の手間を劇的に削減できます。

外国人採用を検討している、あるいは支援体制の見直しを考えている場合は、海外人材コネクトナビ掲載企業を比較してください。費用や支援内容を比較し、システム提供や一部委託に対応できる自社に合ったパートナーを選ぶことで、無理のない運用体制を構築できます。

まとめ|自社支援切り替えで外国人材を長期的な戦力へ

特定技能の支援体制を登録支援機関から自社へ切り替えるプロセスについて、要件から手続き、リスク管理までを整理しました。

自社支援への移行は、単なる目先のコスト削減という枠を超え、外国人材との間に強固な信頼関係を築き、企業文化を浸透させるための重要な経営戦略となります。厳しい要件や業務負担の増加といったハードルはありますが、事前の準備と専門家・ツールの活用によって乗り越えることが可能です。

外国人採用で失敗しないためには、制度や費用、支援内容を比較したうえで、自社に合った採用方法や支援体制を選ぶことが重要です。海外人材コネクトナビ掲載企業を比較し、自社に最適なパートナーへ相談して、外国人材が長く活躍できる環境づくりを進めてください。

執筆者コネクトナビ編集部

外国人材採用に役立つ情報を随時発信しています。


監修青山 信明

2018年から一般社団法人外国人介護留学生支援機構にて、日本で介護職を目指す外国人留学生の生活支援および就職支援を担当。ベトナム・ネパール・インド国籍の学生支援に従事する。
特定技能制度施行後は、同機構が登録支援機関として認可を受ける過程にも関与し、現在は主にベトナム国籍人材を中心とした特定技能外国人の支援業務を行っている。

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よくある質問

登録支援機関から自社支援への切り替えにかかる期間はどのくらいですか?
社内の体制整備や書類作成の準備期間を含めると、概ね1〜2ヶ月程度を見込むのが一般的です。登録支援機関との引き継ぎや、外国人本人への説明期間も考慮して余裕を持ったスケジュールを組んでください。
費用はいくらかかりますか?
自社支援に切り替えること自体に入管への手数料はかかりません。しかし、通訳の雇用や外部サービスの利用、担当社員の人件費など、社内での運用コストは発生します。
日本語レベルや母国語対応はどの程度必要ですか?
制度上、外国人材が「十分に理解できる言語」での支援が義務付けられているため、基本的には彼らの母国語で対応できる体制が必要です。社内に対応できる人材がいない場合は、外部の通訳サービスを活用するなどの対策が求められます。