2026.06.11

特定技能外国人の賃金相場はいくら?給与の決め方と実務の注意点を徹底解説

「初めて特定技能外国人を採用するが、給与をいくらに設定すればよいか分からない」と悩む企業は少なくありません。

「日本人と同等以上」という法的ルールが存在するものの、具体的な相場や各種手当、控除の仕組みが複雑で、自社の基準にどう当てはめればよいか判断が難しいためです。

外国人採用を成功させるためには、最新の賃金相場を把握し、自社の日本人従業員と明確な比較基準を持つ必要があります。

基準が曖昧なまま見切り発車で採用すると、知らずに労働関係法令に違反するリスクが高まるだけでなく、外国人材の早期離職を招く原因になるからです。

特定技能外国人の賃金・給与相場(2026年最新データ)

特定技能外国人の給与水準は年々上昇傾向にあり、適切な相場を把握することが採用の第一歩です。
特定技能の給与相場に関する要点
・平均月給は約21.1万〜23.3万円
・時給換算で1,100円〜1,400円が目安
・建設業や製造業など分野によって平均値が異なる
・企業規模が小さいからといって給与が低いわけではない

全体の平均月給・時給目安と近年の上昇傾向

厚生労働省が公表する統計データによると、特定技能外国人の平均月給は約21.1万円から23.3万円の範囲で推移しています。時給換算では1,100円から1,400円程度が実務上の目安となります。

特定技能制度は即戦力となる人材を受け入れる仕組みであり、給与水準は前年比で継続的に上昇しています。日本国内の深刻な人手不足や、全国的な最低賃金の引き上げが直接的な要因です。今後もこの賃金上昇トレンドは続くと予測されるため、企業は最新の相場に合わせた給与設計を行う必要があります。

産業分野別の給与水準(建設・製造・介護など)

特定技能外国人の給与は、従事する産業分野によって明確な違いが存在します。専門性が高く、肉体的な負担が大きい分野ほど、給与水準は高く設定される傾向にあります。

公的機関の調査に基づく分野別の平均月給は、建設分野で約25.8万円、製造分野で約24.9万円です。一方、介護分野の平均月給は約22.3万円とされていますが、近年は処遇改善加算の影響により給与が大きく上昇しています。実務現場では、夜勤手当などを含めると月収30万円を超えるケースも珍しくありません。自社の属する業界の平均値を把握し、競合他社に見劣りしない条件を提示することが採用成功の鍵を握ります。

企業規模による給与の違いと傾向

外国人労働者の給与水準は、必ずしも企業規模に比例して高くなるわけではありません。政府の賃金構造基本統計調査によると、従業員数1,000人以上の大企業における特定技能外国人の平均月給が約26.3万円で最も高い水準を示しています。

しかし、従業員数10〜99人規模の中小企業でも平均月給は約25.1万円となっており、100〜999人規模の企業を上回る逆転現象が起きています。これは、慢性的な人手不足に悩む中小企業が、優秀な外国人材を確保するためにあえて給与水準を引き上げている実態を表しています。

違法にならないための「特定技能の給与を決める3つの法的基準」

特定技能の給与設定には、出入国在留管理庁や厚生労働省が定める厳格なルールが存在し、これらを遵守しなければ罰則の対象となります。

1. 必須条件となる「日本人と同等以上の報酬」原則

特定技能外国人を雇用する上で最も重要なルールが「日本人と同等以上の報酬」を支払うことです。これは出入国在留管理庁の運用要領でも明確に定められており、同じ業務に従事する日本人労働者と比較して、不当に低い賃金を設定することを固く禁じています。

比較対象となる日本人は、業務内容や責任の範囲が共通している従業員を選ぶ必要があります。社内平均や全く異なる部署の従業員を比較対象にすることは認められません。比較できる日本人が社内にいない場合は、地域の同業他社における賃金水準や、ハローワークの求人情報を参考にして合理的な基準を設ける必要があります。

2. 毎年改定される「最低賃金」の遵守

外国人材に対しても、各都道府県が定める「地域別最低賃金」および「特定(産業別)最低賃金」のいずれか高い方を上回る給与を支払う義務があります。令和7年度の改定により、全国すべての都道府県で最低賃金が1,000円を超え、全国加重平均は1,121円に達しました。

最低賃金は毎年10月頃に改定されるため、企業は常に最新の情報を確認し、自社の給与規程を見直す体制が不可欠です。万が一、最低賃金を下回った状態で労働させた場合、労働基準法違反として厳しい罰則が科されるリスクがあります。

3. 国籍による差別をなくす「同一労働同一賃金」の適用

特定技能外国人には、日本人と同様に「同一労働同一賃金」のガイドラインが適用されます。国籍や雇用形態を理由にして、基本給や手当に不合理な待遇差を設けることは法律で禁止されています。

業務内容や配置転換の範囲が同じであれば、通勤手当、住宅手当、家族手当などの各種手当、さらには社宅の利用や教育研修の機会に至るまで、待遇全体を公平に保つ必要があります。採用担当者は、自社の就業規則が外国人材に対しても平等に適用される内容になっているか、事前に細かく点検することが求められます。

制度選びや外国人採用に関する法的な要件に不安がある場合は、専門家へ相談することが近道です。海外人材コネクトナビでは、特定の業種に強い登録支援機関の特徴を比較し、自社に最適な相談先を見つけることができます。

「技能実習」と「特定技能」における給与水準と待遇の決定的な違い

技能実習と特定技能では、制度の目的と法的な位置づけが根本的に異なるため、給与水準にも明確な差が生じます。

比較項目 特定技能 技能実習
制度の目的 即戦力となる労働力の確保 技能の習得と母国への技術移転
給与の基準 日本人と同等以上の水準が必須 同業務の日本人と同等以上だが実態は最低賃金に近い
平均月給相場 約21.1万〜23.3万円 約18.2万〜20.4万円
転職の可否 同一産業分野内であれば可能 原則として不可(やむを得ない事情を除く)
在留期間 最大5年(2号移行で無期限も可能) 最長5年
家族の帯同 特定技能2号の取得で可能 原則不可

特定技能は純粋な「労働者」として扱われるため、労働基準法が全面的に適用され、給与水準も高く設定されます。さらに、特定技能外国人はより良い労働条件を求めて他社へ転職することが制度上認められています。そのため、他社と比較して賃金や待遇が見劣りする場合、採用後の早期離職に直結するという実務上のシビアな現実があります。

企業が特定技能の給与計算・支払いで注意すべき4つのポイント

給与の基本額を決定した後も、実際の給与計算や支払いにおいて、採用担当者が見落としやすい注意点が複数存在します。

割増賃金(残業・深夜・休日労働)の正確な支払い

特定技能外国人に対しても、所定労働時間を超える時間外労働、深夜労働、休日出勤には、労働基準法に基づく割増賃金を支払う義務があります。時間外労働と深夜労働は25%以上、休日労働は35%以上の割増率を適用して計算します。

実務現場では、残業代の計算方法を誤り、未払い賃金が発生するトラブルが後を絶ちません。タイムカードや勤怠管理システムを正確に運用し、外国人材自身にも割増賃金の仕組みを理解してもらうための説明機会を設けることが必要です。

各種手当・賞与の公平な支給基準

日本人労働者に対して皆勤手当、役職手当、賞与(ボーナス)などを支給している場合、特定技能外国人にも同等の基準で支給する義務が生じます。外国人であることを理由に支給対象から外すことは明確な法令違反となります。

賞与の支給基準については、評価制度や会社の業績連動などの条件を就業規則に明記し、透明性を確保しなければなりません。外国人材は給与の内訳に非常に敏感であるため、不透明な支給基準は不信感を抱かせ、モチベーションの低下に直結します。

トラブルになりやすい「控除(家賃・光熱費)」のルールと説明義務

社宅の家賃や光熱費、食費などを給与から天引き(控除)する場合、その内容と金額を雇用契約書に明記し、本人から書面で同意を得る必要があります。公的機関からも、実費を超える過大な控除は認められないと指導されています。

現場で起こりやすいトラブルとして、家賃控除額が高すぎる結果、手取り額が最低賃金を下回ってしまうケースが挙げられます。控除の根拠となる明細を必ず提示し、母国語で十分に説明を行い、納得を得た上で運用することが企業側の責任です。

所得税の源泉徴収と「居住者・非居住者」の区別

特定技能外国人の給与からも、日本人と同様に所得税と住民税を源泉徴収します。ここで注意すべきは、日本での居住期間による税務上の扱いの違いです。

日本に1年以上居住している外国人は「居住者」となり、日本人と同じ累進課税が適用され、年末調整が必要です。一方、入国直後などで居住期間が1年未満の「非居住者」に対しては、原則として一律20.42%の税率で源泉徴収を行い、年末調整は不要となります。税金の計算ミスは後日大きなトラブルに発展するため、労務担当者はこの区別を正確に理解しておく必要があります。

賃金トラブルを未然に防ぐ実務対策と給与交渉時の対応

外国人材との給与トラブルを防ぐためには、書面での明確な合意形成と、疑問に対して誠実に向き合う対話の姿勢が不可欠です。

雇用契約書や労働条件通知書は、必ず特定技能外国人の母国語を併記した参考様式を使用します。給与額、手当の内訳、控除項目、昇給の条件などを詳細に記載し、入社前に「読み合わせ」を行うことで認識のズレを防ぐことができます。

また、外国人材は自身のスキル向上に合わせて給与交渉を行ってくることが珍しくありません。給与交渉を受けた際は、頭ごなしに否定するのではなく、自社の評価基準や次の昇給に必要な具体的な目標を論理的に説明します。公平な評価制度に基づいた対応を徹底することが、企業への信頼感を高める有効な手段となります。

実務現場でよくある特定技能の給与トラブル失敗事例

他社の失敗事例を知ることで、自社が陥りやすいリスクを事前に回避し、正しい採用体制を構築できます。

・費用だけで登録支援機関を選んだ
支援委託費用の安さだけで登録支援機関を選定した結果、自社の給与規程と入管法のルールのすり合わせが全く行われませんでした。結果として不適切な雇用契約のまま申請を進め、出入国在留管理庁から是正勧告を受ける事態に陥りました。

・家賃控除の設定を誤り手取りが激減した
社宅として借り上げたアパートの家賃全額を給与から天引きした結果、特定技能外国人の手取り額が極端に少なくなりました。本人の生活が困窮し、SNSを通じて同郷のコミュニティに「あの会社は給料が安い」という悪評が広まり、その後の採用活動に深刻な悪影響を及ぼしました。

・定着支援を軽視し昇給基準を説明しなかった
「採用できれば問題ない」と考え、入社後の定着支援を軽視した事例です。給与が上がる条件や会社の評価制度を一切説明しなかったため、外国人材は将来への不安を抱き、入社後わずか1年で条件の良い同業他社へ転職してしまいました。

どの支援会社を選ぶべきか迷った場合は、海外人材コネクトナビ掲載企業を比較してください。費用だけでなく、事前の制度設計から入社後の定着支援まで伴走してくれる登録支援機関を探すことができます。

特定技能の給与設定ケース別解説

自社の属する業界や現在の採用状況に合わせて、給与設定や支援体制のアプローチを変える必要があります。

・介護施設の場合
介護職は処遇改善加算により、給与水準が流動的です。特定技能外国人に対しても加算の配分対象となるため、夜勤手当や資格手当の付与条件を日本人職員と完全に一致させる必要があります。また、夜勤に入るまでのOJT期間中の給与の扱いについても、事前に明確なルールを定めておくことが求められます。

・建設業の場合
建設分野は国土交通省のガイドラインにより、月給制での支払いが強く推奨されています。天候によって稼働日数が減った場合でも、安定した給与を支払う仕組みを整えなければなりません。現場ごとに手当が変わる場合は、どの現場でどのような手当がつくのかを外国人材に分かりやすく可視化する必要があります。

・初めて外国人採用を行う場合
社内に比較対象となる日本人がいない、あるいは就業規則が整備されていない中小企業も少なくありません。この場合、まずは地域のハローワークの求人データを参照し、同規模・同業種の相場を調査します。その後、専門知識を持つ登録支援機関のアドバイスを受けながら、外国人材向けのモデル賃金表を作成することが安全な手順となります。

特定技能の給与・採用体制に関するチェックリスト

特定技能人材の受け入れ前に、自社の給与設定や支援体制に抜け漏れがないかを確認してください。

□ 採用する地域の最新の最低賃金を把握しているか
□ 比較対象となる日本人従業員の基準は明確か
□ 基本給だけでなく、各種手当の支給条件を平等にしているか
□ 残業代や休日出勤の割増賃金の計算方法は正しいか
□ 家賃や光熱費の控除額は実費の範囲内に収まっているか
□ 雇用契約書は本人の母国語を併記して作成しているか
□ 定着支援のノウハウを持つ登録支援機関を比較・選定したか

上記の項目に一つでも不安がある場合は、専門機関への相談を優先して進めるべきです。

よくある質問(FAQ)

特定技能外国人の給与に関して、採用担当者から寄せられる頻出の疑問に回答します。

Q. 日本語能力によって給与に差をつけても問題ありませんか?
問題ありません。
業務に必要な日本語能力(N3、N2など)を客観的な評価基準として就業規則に定め、それに応じて資格手当や能力手当を支給することは、合理的な待遇差として認められます。

Q. 業績悪化を理由に、外国人材だけの給与を下げることはできますか?
できません。
国籍を理由にした不利益な取り扱いは労働基準法違反となります。給与の減額は、日本人従業員も含めた全社的なルールの変更と、労働者との個別の合意が法的に必要となります。

Q. 給与の支払いは銀行振込でなければいけませんか?
原則として銀行振込が推奨されます。
出入国在留管理庁は、給与が確実に支払われていることを確認するため、振込記録が残る口座振込を求めています。外国人材が日本での口座開設をスムーズに行えるよう、企業側が生活支援の一環として同行・サポートすることが制度上求められています。

まとめ:適切な給与設定が優秀な特定技能人材の定着に繋がる

法令を遵守した給与設定と手厚い支援体制こそが、外国人採用を成功に導く最大の要因となります。

特定技能外国人の給与は、年々上昇する相場を把握し、「日本人と同等以上」という法的基準を遵守して決定することが大前提です。最低賃金のクリアはもちろんのこと、各種手当の公平な支給や、控除ルールの透明性確保など、実務上で注意すべきポイントは多岐にわたります。

制度の違いを理解せず、目先のコストを抑えることだけを優先すると、法令違反による罰則や早期離職といった取り返しのつかない失敗を招きます。自社の現状に合わせた適切な給与規程を整備し、外国人材が安心して長く働ける環境を構築することが、企業の持続的な成長に直結します。

外国人採用で失敗しないためには、自社に合った支援体制を整えることが重要です。海外人材コネクトナビ掲載企業を比較し、信頼できる登録支援機関へ相談してください。

執筆者コネクトナビ編集部

外国人材採用に役立つ情報を随時発信しています。


監修青山 信明

2018年から一般社団法人外国人介護留学生支援機構にて、日本で介護職を目指す外国人留学生の生活支援および就職支援を担当。ベトナム・ネパール・インド国籍の学生支援に従事する。
特定技能制度施行後は、同機構が登録支援機関として認可を受ける過程にも関与し、現在は主にベトナム国籍人材を中心とした特定技能外国人の支援業務を行っている。

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